1. インフルエンザウイルスとは?
インフルエンザウイルスは**オルソミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)に属する一本鎖マイナス鎖RNAウイルス(−ssRNA)**です。
毎年の季節性流行だけでなく、パンデミックの原因となり得る重要なウイルスとして、医学・公衆衛生の両面から広く研究されています。
2. 基本構造
インフルエンザウイルス粒子は以下の要素から構成されます。
(1)エンベロープ(膜)
宿主細胞膜由来で、**ヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)**が突き出している。
- HA:細胞表面のシアル酸受容体に結合
- NA:新生ウイルス粒子の放出を助ける
(2)マトリックスタンパク質(M1)
内部構造を安定化し、エンベロープと遺伝子複合体をつなぐ。
(3)リボ核タンパク質複合体(RNP)
ウイルスの遺伝子の中核。
- 8分節のマイナス鎖RNA
- それぞれにNP(Nucleoprotein)
- RNA依存性RNAポリメラーゼ(PB1、PB2、PA)
RNAが分節化されているため、遺伝子交換(リソーティング)が起きやすく、パンデミックの原因にもなります。
3. インフルエンザの分類
A型(Influenza A)
- ヒト、鳥、豚、馬など幅広い宿主に感染
- パンデミックを起こす唯一の型
- HA(H1〜H18)、NA(N1〜N11)の組み合わせでサブタイプ分類
- 例:H1N1、H3N2
B型(Influenza B)
- ヒトにほぼ限定(アザラシにも少数)
- パンデミックは起こらないが季節性流行の主因
- 主に2系統:Victoria系統、Yamagata系統
C型
- 軽症の呼吸器感染
- 流行規模は小さい
D型
- 牛などに感染
- ヒト感染は報告されていない
4. インフルエンザウイルスが重要視される理由
(1)遺伝子変異が速い
RNAポリメラーゼのエラー率が高いため、**抗原変異(抗原ドリフト)**が頻発。
(2)種間伝播が起きやすい
宿主範囲が広く、鳥→豚→ヒトなどの伝播が起こる。
(3)パンデミックのリスクが常に存在
異なるウイルスの遺伝子分節が混ざる抗原シフトによって、新型ウイルスが生まれる。
まとめ
インフルエンザウイルスは、構造・遺伝子・宿主範囲のいずれも独特であり、変異しやすく流行性が高いRNAウイルスの代表格です。
次回は、このウイルスがどのように細胞へ侵入し、増殖するのか――増殖サイクルを徹底解説します。