はじめに
第3回では、蛍光タンパク質の色がどのような分子原理で決まるのかを解説しました。第4回では視点を実践に移し、現在の研究現場で実際に使われている主要な蛍光タンパク質ファミリーを体系的に整理します。
蛍光タンパク質は「色」だけでなく、明るさ・成熟速度・安定性・毒性など多くの特性が異なり、目的に応じた選択が重要です。
1. GFP系蛍光タンパク質
GFP系は、オワンクラゲ由来GFPを基盤として改良された、最も基本的かつ汎用性の高いファミリーです。
代表例として、
- EGFP:高輝度・標準的GFP
- sfGFP:高速折りたたみ・高安定性
があります。
これらは、
- 遺伝子発現レポーター
- ノックインタグ
- ライブセルイメージング
など幅広い用途で用いられます。
2. CFP / YFP 系
CFP(Cyan FP)およびYFP(Yellow FP)は、GFPの変異体として開発されました。
- CFP:短波長側(青緑)
- YFP:長波長側(黄)
に発光します。
この組み合わせは、FRET解析において古典的かつ重要なペアとして利用されてきました。ただし、YFPはpH感受性が高く、実験条件には注意が必要です。
3. 赤色蛍光タンパク質(RFP)系
赤色蛍光タンパク質は、GFPとは異なるサンゴ由来タンパク質を起源とします。
代表的なものとして、
- mCherry:単量体・扱いやすい
- tdTomato:二量体・非常に高輝度
があります。
RFP系は、
- 組織透過性が高い
- 自家蛍光の影響を受けにくい
という利点があり、in vivoイメージングや動物実験で特に重宝されます。
4. 遠赤色・近赤外蛍光タンパク質
近年では、さらに長波長側に発光する遠赤色・近赤外蛍光タンパク質も開発されています。
これらは、
- 深部組織観察
- 生体イメージング
に適しており、医学・がん研究への応用が進んでいます。一方で、明るさや成熟速度に課題が残る場合もあります。
5. ファミリー選択の実践的指針
蛍光タンパク質選択では、
- 観察対象(細胞/組織/生体)
- 多色解析の有無
- 発現量・毒性
を総合的に考慮する必要があります。
「有名だから」「論文でよく見るから」という理由だけで選択すると、実験系に合わないことがあります。
おわりに
第4回では、主要な蛍光タンパク質ファミリーとその特徴を整理しました。次回は、**蛍光タンパク質の実験応用①(発現解析・局在解析)**に焦点を当て、具体的な実験設計に踏み込みます。