1970年代後半:現代医療技術の原型が揃った時代
1976〜1979年は、
- 遺伝子操作
- 神経疾患の新概念
- 医用画像技術
が一気に進展し、
現在の医療の基盤技術が出揃った時代
といえます。
1976年
腫瘍ウイルスと細胞遺伝子
1976年のノーベル生理学・医学賞は
- Baruch Samuel Blumberg
- D. Carleton Gajdusek
に授与されました。
感染症と慢性疾患の関係
Blumbergは
- Hepatitis B
ウイルスを発見し、ワクチン開発につなげました。
Gajdusekは
- Kuru
という神経変性疾患を研究し、
感染性因子が従来の細菌やウイルスとは異なる可能性を示唆しました。
1977年
ホルモンと神経ペプチド
1977年のノーベル生理学・医学賞は
- Roger Guillemin
- Andrew Schally
- Rosalyn Yalow
に授与されました。
視床下部ホルモンの発見
彼らは
- Thyrotropin-releasing hormone
などの神経ペプチドホルモンを同定しました。
RIA法の確立
Yalowは
- Radioimmunoassay
を開発し、極微量ホルモンの測定を可能にしました。
これは臨床検査医学の革命でした。
1978年
CTスキャンの開発
1978年のノーベル生理学・医学賞は
- Godfrey Hounsfield
- Allan Cormack
に授与されました。
体内を切らずに見る技術
彼らは
- Computed tomography
を開発し、
人体の断層画像を非侵襲的に取得することを可能にしました。
医学診断の革命
これにより
- 脳出血
- 腫瘍
- 内臓疾患
の診断精度が飛躍的に向上しました。
1979年
DNA組換え技術の確立
1979年のノーベル生理学・医学賞は
- Werner Arber
- Daniel Nathans
- Hamilton Othanel Smith
に授与されました。
制限酵素の発見
彼らは
- Restriction enzyme
を発見し、
DNAを特定の位置で切断できるようにしました。
遺伝子工学の誕生
これにより
- 遺伝子クローニング
- 遺伝子改変
- バイオ医薬品
が可能となり、
現代バイオテクノロジーの基盤
が確立されました。🧬
プリオン概念の誕生(ノーベル賞外だが重要)
1970年代後半には
- Stanley Prusiner
が
- Prion
という概念を提唱し始めます(ノーベル賞は1997年)。
タンパク質が感染するという衝撃
これは
- DNAもRNAも持たない感染因子
という、それまでの生物学の常識を覆すものでした。
この4年間の科学的意義
1976〜1979年は、医学が
診断・操作・概念革新
の三方向で飛躍した時代でした。
① 分子操作技術の確立
制限酵素の発見により、
生命は初めて
人工的に設計・改変できる対象
となりました。
② 画像診断の革命
CTスキャンは
「体内を直接見る」医学
を可能にしました。
③ 疾患概念の拡張
プリオンの登場により、
病気の原因は
- 細菌
- ウイルス
だけではないことが明確になりました。
まとめ
| 年 | 受賞者 | 主題 |
|---|---|---|
| 1976 | Blumberg & Gajdusek | 感染症 |
| 1977 | Guilleminら | ホルモン・RIA |
| 1978 | Hounsfield & Cormack | CT |
| 1979 | Arberら | 制限酵素 |
1970年代後半は
現代医療技術とバイオテクノロジーの出発点
となる時代でした。
次回予告
次回は
第20回:1980〜1983年
を解説します。
ここでは
- 遺伝子組換え医薬
- モノクローナル抗体
- 可視化技術の進展
など、バイオ医療が産業化していく時代に入ります。