戦後直後:医学と分子生物学の再始動
第二次世界大戦が終結に向かう1944〜1947年は、
- 抗生物質の実用化
- 遺伝物質の本質解明
- 免疫学の体系化
という、現代医学の直接的基盤が整った時代です。
この時期から医学は本格的に
「分子の時代」
へと移行していきます。
1944年
ペニシリンのノーベル賞
1944年のノーベル生理学・医学賞は
- Alexander Fleming
- Howard Florey
- Ernst Boris Chain
に授与されました。
世界初の抗生物質の社会実装
彼らは
- Penicillin
を
- 大量生産
- 臨床応用
- 軍医療への導入
まで実現しました。
これにより
肺炎・敗血症・梅毒などの致死率が劇的に低下
し、医学史上最大級の死亡率低下が起こります。
1944年のもう一つの革命
DNAが遺伝物質である証拠
同年、
- Oswald Avery
- Colin MacLeod
- Maclyn McCarty
が
肺炎双球菌の形質転換実験
により、
- DNA
こそが遺伝情報の担体であることを示しました。
この研究は当時ノーベル賞を受賞しませんでしたが、
1953年のDNA二重らせん発見の直接的前提となります。
1945年
戦後初の授与と医学の再建
1945年は医学賞の授与はありませんでしたが、研究体制は急速に復旧し、
- 国際学会の再開
- 学術誌の復刊
- 研究者の帰還
が進みました。
この年は
「医学研究の再起動元年」
と呼ばれることもあります。
1946年
免疫学と抗体の特異性
1946年のノーベル生理学・医学賞は
- John Howard Northrop
- Wendell Meredith Stanley
- James Batcheller Sumner
に授与されました。
酵素とウイルスがタンパク質である証明
彼らは
- 酵素の結晶化
- ウイルス粒子の精製
に成功し、
生命現象がタンパク質という物質に依存する
ことを示しました。
これは
- Enzyme
- Virus
研究の分子生物学化を意味します。
1947年
抗生物質研究の拡張
1947年のノーベル生理学・医学賞は
- Carl Ferdinand Cori
- Gerty Cori
- Bernardo Houssay
に授与されました。
代謝研究の確立
彼らは
- グリコーゲン代謝
- ホルモンと糖代謝
を解明し、
- Glycolysis
- Cori cycle
など、現在の代謝生化学の基盤を築きました。
この4年間の科学的意義
1944〜1947年は、医学が
感染症 → 遺伝子 → 代謝
という三層構造で理解され始めた時代でした。
① 抗生物質時代の本格到来
ペニシリンの成功により、
製薬企業と大学研究が結びついた
現代型バイオ医薬産業
が誕生します。
② 遺伝子の分子実体が確定へ
Averyらの研究は、
のちの
- Central dogma of molecular biology
の成立に直結します。
③ 代謝研究の体系化
Coriらの研究は
- 糖尿病
- 肥満
- がん代謝
研究の出発点となりました。
まとめ
| 年 | 受賞者 | 主題 |
|---|---|---|
| 1944 | Flemingら | ペニシリン |
| 1945 | なし | – |
| 1946 | Northropら | 酵素・ウイルス |
| 1947 | Cori夫妻ら | 代謝 |
1944〜1947年は
分子生物学・代謝学・抗生物質
が同時に確立した、医学史の転換点でした。
次回予告
次回は
第12回:1948〜1951年
を解説します。
ここでは
- ストレプトマイシン
- 抗ヒスタミン薬
- 電気ショック療法
など、戦後医療の急速な臨床応用の時代に入っていきます。