戦後医療の本格的臨床時代
1948〜1951年は、第二次世界大戦後の復興とともに
- 抗生物質の普及
- 薬理学の発展
- 精神医学の治療法改革
が同時に進んだ時代です。
この時期から医学は
「研究の成果を社会に実装する段階」
へと移行しました。
1948年
神経系の反射機構の解明
1948年のノーベル生理学・医学賞は
- Paul Hermann Müller
ではなく(これは化学賞)、医学賞は
- Walter Rudolf Hess
に授与されました。
視床下部と自律神経
Hessは脳の
- Hypothalamus
を電気刺激する実験により、
- 心拍
- 血圧
- 摂食行動
などが特定の脳領域で制御されることを示しました。
これは
自律神経系の中枢制御
の発見でした。
1949年
精神医学の大転換:前頭葉手術
1949年のノーベル賞は
- António Egas Moniz
に授与されました。
ロボトミーの登場
Monizは
- Lobotomy
を開発し、当時治療困難だった
- 統合失調症
- 重度うつ病
に対する外科的治療を提案しました。
この治療は後に倫理的問題から廃止されますが、
当時は精神医学における初の有効治療法として大きな影響を与えました。
1950年
副腎皮質ホルモンの発見
1950年のノーベル賞は
- Philip Showalter Hench
- Edward Calvin Kendall
- Tadeus Reichstein
に授与されました。
コルチゾンの臨床効果
彼らは
- Cortisone
を単離・合成し、
- 関節リウマチ
- 炎症性疾患
に劇的な治療効果を示しました。
これは
ステロイド治療の誕生
を意味します。
1951年
結核治療を変えた抗生物質
1951年のノーベル生理学・医学賞は
- Selman Abraham Waksman
に授与されました。
ストレプトマイシンの発見
Waksmanは
- Streptomycin
を発見し、
- Tuberculosis
に対する初の有効薬を提供しました。
結核は当時世界最大の死因の一つであり、この発見は公衆衛生に革命をもたらしました。
この4年間の科学的意義
1948〜1951年は、医学が
脳・免疫・感染症
という異なる領域で同時に治療法を確立した時代でした。
① 脳機能の局在化と神経科学の進展
Hessの研究により、
脳は単なる思考器官ではなく
身体機能を統合する中枢制御装置
であることが明確になりました。
② 精神疾患への医療介入の開始
ロボトミーは現在では否定されていますが、
精神疾患を医学的に治療可能な疾患として扱う転換点となりました。
③ 炎症と免疫の薬理学的制御
コルチゾンの登場により、
免疫反応を薬で制御できることが証明されました。
これは後の
- 免疫抑制剤
- 抗アレルギー薬
開発の基礎となります。
④ 抗生物質の第二世代の到来
ペニシリンに続きストレプトマイシンが登場したことで、
感染症治療は
多剤時代
に突入しました。
まとめ
| 年 | 受賞者 | 主題 |
|---|---|---|
| 1948 | Hess | 視床下部と自律神経 |
| 1949 | Moniz | ロボトミー |
| 1950 | Henchら | コルチゾン |
| 1951 | Waksman | ストレプトマイシン |
1948〜1951年は
薬物療法・精神医学・神経科学
が臨床医学として確立した時代でした。
次回予告
次回は
第13回:1952〜1955年
を解説します。
ここでは
- DNA研究の加速
- 電子顕微鏡による細胞構造の解明
- 代謝と酵素研究の深化
など、いよいよ分子生物学革命の直前期に入っていきます。