H&E染色とは?
H&E染色(Hematoxylin and Eosin stain)は、組織学や病理学で最も広く使われる染色法です。
細胞核を青紫に、細胞質や基質をピンクに染め分けることで、組織全体の形態を明確に観察できます。
病理診断ではまず必ずH&E染色が行われ、腫瘍の有無や組織構造の乱れを確認する基本的な手段となっています。
染色の仕組み
1. ヘマトキシリン(核を青紫に染める)
- 塩基性色素であり、DNAやRNAに豊富な核酸に結合
- 細胞核やリボソーム、粗面小胞体などを濃く染める
2. エオシン(細胞質をピンクに染める)
- 酸性色素であり、タンパク質に結合
- 細胞質、結合組織、赤血球、筋肉などが染まる
この 対比的な染色 によって、細胞核と細胞質の位置関係や組織の構築が一目でわかるようになります。
H&E染色の手順の流れ
- 脱パラフィン・脱水:切片をキシレン・アルコールで処理
- ヘマトキシリン染色:核を青紫に染色
- 分別・青色化:不要な染色を除去し、核を明瞭にする
- エオシン染色:細胞質や基質をピンクに染色
- 脱水・封入:顕微鏡観察のためにプレパラートを完成
観察される組織像の特徴
- 核:青紫(腫大や分裂像の確認に有用)
- 細胞質:ピンク(組織構造や細胞形態を把握)
- 赤血球:鮮やかなピンク~赤色
- 結合組織:淡いピンク
このように、細胞と周囲の組織をコントラストよく可視化できるのがH&E染色の強みです。
H&E染色の役割
- 病理診断の第一歩:腫瘍の有無、炎症、壊死、線維化などを確認
- 研究:組織構造の変化を基盤として、特殊染色や免疫染色につなげる基礎データ
- 教育:組織学の入門として最初に学ぶ染色
まとめ
H&E染色は、もっとも基本的でありながら現在も病理診断・研究の中心的手法です。
- ヘマトキシリンで核を青紫に
- エオシンで細胞質をピンクに
- 組織全体の構造を鮮明に把握
この染色を基盤として、より詳細な特殊染色や免疫染色へと進んでいくことができます。