免疫染色(IHC・IF)の基本と仕組み

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免疫染色とは?

免疫染色(Immunostaining)は、抗体を使って特定のタンパク質を組織切片上で検出する方法です。
抗体の特異性を利用することで、「どの細胞がどの分子を発現しているか」を可視化できます。

病理診断では腫瘍の種類や分化度の判定に、研究ではシグナル伝達や細胞間相互作用の解析に活用されます。


免疫染色の主な種類

1. IHC(Immunohistochemistry:免疫組織化学)

  • 検出方法:一次抗体 → 二次抗体(酵素標識) → 基質と反応して色が沈着
  • 染まり方:茶色(DAB発色)や赤色など、光学顕微鏡で観察可能
  • 特徴
    • 組織構造を保ったまま標的タンパク質を検出できる
    • 病理診断で最も多用される
  • 臨床応用例
    • ER/PR/HER2染色(乳がんのホルモン受容体診断)
    • Ki-67染色(細胞増殖マーカー)

2. IF(Immunofluorescence:免疫蛍光染色)

  • 検出方法:一次抗体または二次抗体に蛍光色素を結合させて検出
  • 染まり方:特定波長の光で励起され、緑・赤・青などの蛍光を発する
  • 特徴
    • 複数のタンパク質を同時に染め分け可能(多重染色)
    • 共焦点顕微鏡を用いて細胞内局在を三次元的に解析できる
  • 研究応用例
    • 幹細胞マーカーの共発現解析
    • シグナル伝達経路の局在解析

IHCとIFの違いのまとめ

項目IHCIF
検出方法酵素反応による発色蛍光色素による発光
観察機器光学顕微鏡蛍光顕微鏡・共焦点顕微鏡
染色数1〜数種類複数同時(多重解析)
主な用途病理診断研究解析、局在解析

免疫染色の基本手順

  1. 抗原賦活化:ホルマリン固定などでマスクされた抗原を露出
  2. 一次抗体反応:標的タンパク質に特異的に結合
  3. 二次抗体反応:発色酵素や蛍光色素を結合した抗体で可視化
  4. 観察:光学顕微鏡や蛍光顕微鏡で評価

免疫染色の役割

  • 病理診断:腫瘍のタイプや悪性度の評価
  • 研究:細胞内局在、シグナル経路の解析、幹細胞マーカーの検出
  • 臨床応用:バイオマーカー探索や治療方針決定

まとめ

免疫染色は、分子レベルでの組織解析を可能にする強力な方法です。

  • IHC:病理診断で必須(発色法)
  • IF:研究で多用(多重解析・局在解析)

H&Eや特殊染色に比べ、免疫染色は「特定のタンパク質を pinpoint で捉える」ことができ、診断と研究の両分野で中心的な役割を果たしています。

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