CISH(クロモジェニック in situ hybridization)とは?原理と応用の解説

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CISH(chromogenic in situ hybridization) は、特定のDNAやRNA配列を組織切片上で検出するための染色法で、ISH(in situ hybridization)の一種です。
FISH(蛍光ISH)が蛍光色素を利用するのに対し、CISHでは 酵素反応による発色(クロモジェニックシグナル) を利用するため、蛍光顕微鏡ではなく 通常の光学顕微鏡 で観察できるのが大きな特徴です。臨床病理診断に適した手法として広く用いられています。


1. CISHの基本原理

  1. プローブの設計
    標的DNAまたはRNAに相補的な核酸プローブを用意し、ビオチンやジゴキシゲニン(DIG)などで標識。
  2. 組織切片でのハイブリダイゼーション
    プローブを切片上の核酸に結合させます。
  3. 酵素標識抗体による検出
    標識に対応する抗体(例:抗DIG抗体)にペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼを結合。
  4. 発色基質反応
    酵素反応により不溶性の色素沈着を生じ、標的遺伝子が存在する細胞に「茶色や青色のドット」として可視化されます。

2. FISHとの違い

  • 観察方法
    • FISH:蛍光顕微鏡が必要
    • CISH:通常の光学顕微鏡で観察可能
  • シグナルの安定性
    • FISH:蛍光退色が起こるため長期保存に不向き
    • CISH:発色シグナルは退色しにくく、プレパラートを長期間保存可能
  • 多重検出
    • FISHは複数色で同時検出が得意
    • CISHは基本的に一度に検出できる標的は少ない

3. CISHでわかること

  • 遺伝子コピー数の評価
    HER2 遺伝子の増幅 → 乳がん治療方針決定に利用
  • 染色体異常の検出
    例:ALK 遺伝子の再構成、染色体欠失の確認
  • 研究応用
    遺伝子発現の空間的解析、免疫染色との組み合わせ

4. CISHの利点と限界

利点

  • 光学顕微鏡で観察でき、病理診断のルーチンに導入しやすい
  • 組織の形態学的背景と同時に観察可能
  • プレパラートを長期保存でき、再評価や教育にも活用可能

限界

  • 蛍光ほどの多重解析は難しい
  • 感度はRNAscopeのような最新RNA検出技術より劣る

まとめ

CISHは、酵素反応による発色を利用したin situ hybridization で、光学顕微鏡を使って遺伝子異常を評価できる手法です。FISHと比較して観察や保存が容易で、特に HER2遺伝子増幅の評価 など臨床病理の場で有用性が高い染色法です。今後は免疫染色やデジタル病理と組み合わせた応用が期待されます。

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