受精とは
受精(fertilization)は、精子と卵子が融合し、**接合子(zygote)**と呼ばれる新しい生命の出発点となる細胞を形成する過程です。
- 精子は卵子の透明帯を突破し、細胞膜と融合する
- 精子由来の遺伝情報と卵子由来の遺伝情報が統合される
- 接合子は 二倍体(2n) のゲノムを持つ
この瞬間から、発生の時計が動き始めます。
卵割(Cleavage)の特徴
受精後、接合子は分裂を開始します。これが卵割(cleavage)と呼ばれる過程です。
卵割の特徴
- 細胞数は増えるが、全体のサイズは変わらない(母体からの栄養に依存しているため)
- 分裂によって生じる小さな細胞は 割球(blastomere) と呼ばれる
- 分裂速度や様式は種によって異なる
卵割の進行
- 2細胞期:受精卵が最初に2つの割球に分かれる
- 4細胞期 → 8細胞期:割球の数が倍々に増えていく
- 桑実胚(Morula):細胞がブドウの房のように密集する段階
- 胚盤胞(Blastocyst):内部に空洞(胞胚腔)が形成され、発生が次の段階に進む準備が整う
卵割の意義
卵割は、1つの受精卵が将来の複雑な身体を形作るための「材料」を確保する段階です。
- 割球はまだ未分化であり、全能性(totipotency) を保持している
- ここでの細胞配置や分裂パターンが、その後の胚発生に影響を与える
まとめ
受精と卵割は、発生の最初の扉を開く重要なステップです。
- 受精により新しい遺伝情報の組み合わせが生まれる
- 卵割により多細胞化が始まり、将来の胚発生の基盤が作られる
このプロセスを理解することは、発生学の全体像を把握する上で欠かせません。
次回の予告
次回は「胚盤胞形成と着床」について解説します。ここからいよいよ、胚が母体との相互作用を開始し、発生の舞台は大きく広がっていきます。
👉 この記事は「発生学シリーズ」の第2回です。第1回「発生学の概要」をまだ読んでいない方は、そちらからご覧いただくと理解が深まります。