末梢神経系の発生:外胚葉から広がる神経堤の物語

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神経堤細胞とは?

外胚葉から形成された神経管の背側に位置する細胞群が「神経堤細胞」です。神経管が閉鎖する過程で一部の細胞が遊走を始め、全身に広がります。神経堤は「第四の胚葉」と呼ばれることもあり、外胚葉の中でも非常に多様な細胞を生み出します。


神経堤細胞の移動と分化

  1. 発生初期(3〜4週ごろ)
    神経管の背側から分離した神経堤細胞が上皮間葉転換(EMT)を起こし、遊走可能になります。
  2. 遊走経路
    • 体幹部の神経堤 → 脊髄神経節(後根神経節)、交感神経節、副腎髄質
    • 頭部の神経堤 → 顔面の骨・軟骨、歯乳頭、眼の一部
  3. 最終分化
    神経堤細胞は最終的に次のような多彩な細胞群になります:
    • 感覚ニューロン(脊髄後根神経節、脳神経節)
    • 自律神経ニューロン(交感・副交感神経節)
    • シュワン細胞、衛星細胞
    • 副腎髄質のクロム親和細胞
    • 頭蓋顔面の骨・軟骨
    • メラノサイト(皮膚色素細胞)

分化を制御する分子シグナル

  • BMP(Bone Morphogenetic Protein):神経堤細胞の誘導に必須
  • Wntシグナル:遊走と分化を促進
  • Notchシグナル:細胞運命の制御

これらのシグナルが複雑に組み合わさり、神経堤細胞の多様性が生まれます。


臨床との関連

神経堤由来の異常は「神経堤疾患(Neurocristopathy)」と総称されます。代表的なものに:

  • Hirschsprung病(腸管神経節の欠如)
  • Waardenburg症候群(色素異常・難聴)
  • 神経芽腫(副腎髄質・交感神経系腫瘍)

これらは神経堤の移動や分化の不全が原因となります。


まとめ

  • 神経堤細胞は外胚葉由来の特殊な細胞群で、遊走して全身に広がります。
  • 感覚神経、自律神経、副腎髄質、メラノサイトなど多彩な細胞を生み出します。
  • 発生異常は先天疾患や腫瘍として臨床に直結します。
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