泌尿生殖系の発生 ― 腎臓・尿路・生殖器の形成

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

泌尿生殖系の起源

泌尿器系と生殖器系は、ともに**中胚葉(中間中胚葉)**から発生します。発生の初期には尿路と生殖の原基が隣接しており、密接に関連した構造として分化していきます。


腎臓の発生 ― 三段階の形成

  • 前腎(pronephros)
    • 第4週初期に形成される最も原始的な腎。
    • すぐに退縮し、ヒトでは機能しない。
  • 中腎(mesonephros)
    • 第4週後半〜第5週に出現。
    • 一時的に尿生成能を持ち、排泄管(中腎管:ウォルフ管)を形成。
    • 後に男子では生殖器官の一部に利用される。
  • 後腎(metanephros)
    • 第5週以降に発生し、最終的な永久腎となる。
    • 中腎管から分岐する尿管芽と、後腎芽体が相互作用して形成。
    • 第9週ごろから尿産生を開始。

尿路系の発生

  • 第5〜7週
    • 尿管芽から尿管・腎盂・腎杯・集合管が形成。
    • 膀胱は総排泄腔(cloaca)の前方部分から分化。
    • 尿道は総排泄腔の後部から形成される。
  • 第8週以降
    • 尿道の性差が出現し始める。男子では尿道がペニス内部へ延長、女子では短く外陰部に開口。

生殖器の発生

  • 第5週
    • 中腎の内側に生殖隆起が出現し、生殖腺の原基となる。
  • 第6〜7週
    • 性決定が始まる。
    • 男性では SRY遺伝子 が精巣分化を誘導。
    • 女性では SRY がないため卵巣へ分化。
  • 第8週以降
    • 男性:セルトリ細胞が抗ミュラー管ホルモン(AMH)を分泌 → ミュラー管が退縮。ウォルフ管が精巣上体・精管などに分化。
    • 女性:ウォルフ管は退縮。ミュラー管が子宮・卵管・膣上部に分化。

発生週齢まとめ

  • 第4週: 前腎 → 退縮
  • 第4〜5週: 中腎形成、一時的に機能
  • 第5週: 後腎(永久腎)発生開始、生殖隆起出現
  • 第6〜7週: 性決定(SRY の有無で分岐)
  • 第7週以降: 膀胱・尿道の形成進行
  • 第9週: 後腎が尿生成を開始
  • 第10週以降: 生殖器官の性差が顕著に

臨床的意義

  • 先天性腎無形成・異形成:尿管芽と後腎芽体の相互作用不全
  • 尿道下裂・膀胱外反症:尿道・膀胱形成過程の異常
  • 両性具有・性分化疾患(DSD):性決定や管系分化の異常
  • 馬蹄腎:腎の癒合と移動障害による形成異常

まとめ

  • 泌尿生殖系は中間中胚葉由来で、腎臓は前腎→中腎→後腎の三段階を経て形成。
  • 生殖器は6〜7週に性分化が始まり、ミュラー管とウォルフ管の運命で男女の違いが決まる。
  • この過程の理解は、泌尿器系や生殖器系の先天異常の診断に不可欠。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*