はじめに:顆粒球とは
好中球・好酸球・好塩基球は、いずれも骨髄で作られる顆粒球(granulocyte)に分類される白血球です。
それぞれの細胞質には特有の顆粒が含まれ、これらの顆粒に殺菌・炎症調節・免疫修飾作用を持つタンパク質が蓄えられています。
彼らは主に自然免疫の一員として、感染やアレルギー、組織損傷などの現場で迅速に反応します。
1. 好中球(neutrophil):感染防御の最前線
概要
好中球は、白血球の中で最も多く(全白血球の50〜70%)を占める細胞で、感染部位に最初に集結する「第一応答者」です。寿命は短く、通常1〜2日で死滅しますが、その短期間に強力な防御反応を展開します。
主な機能
- 貪食作用:細菌や真菌を取り込み、リソソームで分解。
- 殺菌顆粒の放出:ミエロペルオキシダーゼ、エラスターゼ、ラクトフェリンなどを放出して殺菌。
- NETs形成(Neutrophil Extracellular Traps):DNAと抗菌タンパク質を放出し、病原体を網のように捕捉。
疾患との関連
- 感染症:好中球減少症では細菌感染に極めて脆弱になります。
- 炎症性疾患:過剰な好中球活性化は組織障害を引き起こし、敗血症や慢性炎症の原因となります。
2. 好酸球(eosinophil):寄生虫防御とアレルギー反応の担い手
概要
好酸球は全白血球の1〜5%を占め、寄生虫感染やアレルギー反応に関与します。顆粒は酸性染色(エオシン)に強く染まることから名づけられました。
主な機能
- 寄生虫防御:主要塩基性タンパク(MBP)、好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)などの毒性分子を放出し、寄生虫を攻撃。
- アレルギー反応:IgEを介した刺激で活性化し、気道や皮膚に炎症を引き起こします。
- 免疫調節:IL-4、IL-13を分泌し、Th2型免疫応答を増強。
疾患との関連
- 気管支喘息:気道内の好酸球増加が特徴的で、慢性炎症や気道過敏性を引き起こします。
- 好酸球性副鼻腔炎・皮膚炎:慢性アレルギー疾患に深く関与。
- 寄生虫感染:アニサキス症やフィラリア症などで好酸球増多が見られます。
3. 好塩基球(basophil):アレルギー反応の触媒
概要
好塩基球は白血球の中で最も数が少なく(全体の1%未満)、塩基性色素で濃く染まる顆粒を持ちます。
マスト細胞と似た性質を持ち、IgE受容体を介してアレルギー反応を誘導します。
主な機能
- ヒスタミン放出:アレルゲン刺激により顆粒からヒスタミンやヘパリンを放出し、血管拡張や透過性亢進を引き起こします。
- サイトカイン産生:IL-4、IL-13を放出してTh2細胞分化を促進。
- マスト細胞との連携:好塩基球は循環系で働くのに対し、マスト細胞は組織常在型です。
疾患との関連
- アナフィラキシー:全身的な急性アレルギー反応を引き起こす主要因。
- 花粉症・アトピー性皮膚炎:好塩基球やマスト細胞の過剰活性が症状を悪化させます。
顆粒球の相互作用と炎症制御
これら3種類の顆粒球は、単独で働くのではなく、互いに連携して炎症を調整します。
たとえば、好中球が放出するサイトカインが好酸球の集積を誘導し、好酸球は炎症終息期に抗炎症性因子を分泌して反応を鎮静化します。
こうしたバランスが崩れると、慢性炎症やアレルギー疾患が持続的に進行します。
まとめ
好中球・好酸球・好塩基球は、感染や炎症の「最前線」で活躍する白血球です。
- 好中球:感染初期の防御
- 好酸球:寄生虫とアレルギー制御
- 好塩基球:アレルギー誘発と免疫調節
それぞれが独自の役割を持ちながらも、協調的に働くことで生体防御の均衡を保っています。