第2回:インフルエンザウイルスの増殖サイクル(細胞侵入〜放出まで)

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1. インフルエンザ増殖の全体像

インフルエンザウイルスは、細胞表面の受容体に結合して取り込まれ、細胞内でゲノム複製・タンパク質合成を行います。
その後、細胞表面から新しいウイルス粒子として放出され、次の細胞へ感染を広げます。

増殖サイクルは大きく以下のステップに分けられます:

  1. 受容体結合(HAとシアル酸)
  2. エンドサイトーシス(細胞内への取り込み)
  3. 膜融合とRNPの放出
  4. 核内でのゲノム複製・転写
  5. ウイルスタンパク質の翻訳・輸送
  6. ウイルス粒子の組み立て
  7. NAによるウイルス放出

それぞれ詳しく解説します。


2. 受容体結合(ウイルスの「カギ」)

ウイルス表面の ヘマグルチニン(HA) が、宿主細胞表面の**シアル酸(Sialic acid)**に結合することで感染が始まります。

  • ヒト型インフルエンザ:α2,6結合シアル酸を好む
  • 鳥型インフルエンザ:α2,3結合シアル酸を好む

この「受容体特異性」が種特異性や伝播性を決める重要因子です。


3. エンドサイトーシス(細胞内へ取り込まれる)

受容体に結合したウイルスは、細胞膜に包まれながらエンドソームに取り込まれます。
インフルエンザウイルスは主にクラスリン依存性エンドサイトーシスを利用します。


4. 低pHによる膜融合とRNPの脱殻

エンドソームが酸性化すると、以下の変化が起きます。

(1)HAの構造変化

酸性環境でHAが“開く”ことで、ウイルス膜とエンドソーム膜が融合

(2)M2イオンチャネルが作動

M2タンパク質がH⁺を取り込み、ウイルス内部のpHが変化することで
RNPがコート(M1)から解放される。

この2つによってRNPが細胞質へ放出され、次のステップへ進みます。


5. 核内でのゲノム複製・転写(RNAウイルスでは珍しい特徴)

インフルエンザのRNPは核内に移行します(−ssRNAウイルスとしては例外的)。

主な理由:

  • キャップスナッチング(宿主mRNAのキャップを奪う)
  • NPやポリメラーゼの核内輸送シグナル
  • スプライシング(M2、NS2など)を必要とする

核内で行われる反応

  1. mRNA合成(転写)
  2. cRNA合成(複製中間体)
  3. vRNAの増幅

ウイルスポリメラーゼ(PB1・PB2・PA)が、mRNAとゲノム複製の両方を担います。


6. タンパク質合成と輸送

mRNAは細胞質へ輸送され、リボソームで翻訳されます。

翻訳されたタンパク質の行き先

(A)細胞膜へ行くタンパク質

  • HA
  • NA
  • M2

これらは小胞体 → ゴルジ体 → 細胞膜へ輸送される。

(B)核に戻るタンパク質

  • NP
  • PB1
  • PB2
  • PA

RNPを組み立てるために核へ戻ります。

(C)構造タンパク質

  • M1(マトリックス)
  • NS2(核外輸送)

M1とNS2はRNPと結合し、核外へ輸送する役割を果たします。


7. ウイルス粒子の組み立て

細胞膜の特定領域(脂質ラフト)にHA・NA・M2が集積。
そこにRNPとM1が移動し、**ウイルス粒子が膜から出芽(budding)**していきます。

RNPは8分節すべてをセットでパッケージングされる必要があるため、選別メカニズムが働いていると考えられています。


8. NAによるウイルス放出(最後のステップ)

ウイルスが細胞膜から出芽したあと、まだ細胞表面のシアル酸に「くっついたまま」になります。
そこで活躍するのがノイラミニダーゼ(NA)

  • シアル酸を切断
  • ウイルス粒子を細胞から“切り離す”

これが阻害されると、ウイルスは細胞膜に張り付いたまま広がれません。

タミフル(オセルタミビル)などの薬は、まさにこのステップを止める薬です。


まとめ

インフルエンザウイルスの増殖は以下のように整理できます。

  1. シアル酸に結合:HA
  2. 取り込み:エンドサイトーシス
  3. 膜融合:低pH+HA変化+M2
  4. 核内でRNA複製:RNP+PB1/2/PA
  5. タンパク輸送:ER → Golgi → 細胞膜
  6. 出芽:M1が構造を形成
  7. 放出:NAがシアル酸を切断

次回はさらに深く踏み込み、
「感染成立の分子メカニズム(受容体特異性・細胞侵入・宿主適応)」
について詳細に解説します。

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