はじめに
「ぐっすり眠れた」「浅かった気がする」
私たちは感覚的に睡眠の質を語りますが、睡眠は実際には明確な“構造”を持つ生理現象です。
第2回では、
✔ 睡眠はどう分類されるのか
✔ レム睡眠とノンレム睡眠は何が違うのか
✔ なぜ一晩で何度も行き来するのか
を、脳科学の視点から整理します。
睡眠は一種類ではない
脳波(EEG)を使って睡眠を観察すると、
睡眠は大きく次の2つに分かれます。
- ノンレム睡眠(Non-REM sleep)
- レム睡眠(REM sleep)
重要なのは、
👉 一晩中どちらかが続くわけではない
という点です。
ノンレム睡眠とは何か
ノンレム睡眠は、さらに3段階に分かれます。
N1(浅い眠り)
- うとうと状態
- 簡単に目が覚める
- 筋肉はまだ活動的
「寝落ち直前」の感覚に近い段階です。
N2(中等度の眠り)
- 全睡眠時間の約50%
- 睡眠紡錘波・K複合波が出現
- 外界刺激への反応が低下
実は、最も長く滞在するのがこの段階です。
N3(深い眠り:徐波睡眠)
- 脳波が非常にゆっくり(デルタ波)
- 起こすのが難しい
- 成長ホルモン分泌が最大
いわゆる
👉 「熟睡」「深い眠り」
はこの段階を指します。
レム睡眠とは何か
REM = Rapid Eye Movement(急速眼球運動)
特徴はかなり独特です。
- 脳波は覚醒に近い
- 体はほぼ完全に脱力
- 夢を見やすい
👉 脳は起きていて、体は眠っている
という不思議な状態です。
なぜ体が動かないのか
レム睡眠中に体が動かないのは、安全装置です。
- 脳幹が運動ニューロンを抑制
- 夢の内容を実行しないようにする
この仕組みが壊れると、
✔ レム睡眠行動障害
(夢の内容を実際に行ってしまう)
が起こります。
睡眠は「90分サイクル」で進む
典型的な睡眠構造は以下の通りです。
- ノンレム → レム
- 約90分で1サイクル
- 一晩に4〜6回繰り返す
特徴的なのは、
- 前半:ノンレム(深い睡眠)が多い
- 後半:レム睡眠が増える
つまり、
👉 朝方の睡眠は「夢の時間」になりやすい。
それぞれの役割の違い
現在の理解では、
ノンレム睡眠
- 脳と体の回復
- 老廃物の除去
- 宣言記憶(事実・知識)の固定
レム睡眠
- 感情の処理
- 手続き記憶(技能)の整理
- 創造性・連想の促進
どちらが欠けても睡眠は不完全です。
「深い睡眠さえあれば良い」は間違い
よくある誤解ですが、
深い睡眠(N3)さえ取れればOK
ではありません。
- レム睡眠が減ると情緒不安定に
- ノンレムが減ると疲労回復しない
👉 睡眠は「量」より「構造」
これが睡眠科学の重要なポイントです。
まとめ
- 睡眠はノンレムとレムに分かれる
- ノンレムには深さの段階がある
- レム睡眠は脳が活発・体は脱力
- 一晩で周期的に繰り返される
- どちらも欠かせない役割を持つ
次回は、
「眠っているのに脳は何をしているのか?」
――睡眠中の脳活動に踏み込みます。