【第6回】in vivo遺伝子改変 ― 体内で直接ゲノムを編集する

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はじめに

これまで解説してきた遺伝子改変は、多くが

  • 細胞株
  • 受精卵
  • ex vivo操作

でした。

しかし現在の最前線は、

「体内で直接編集する」

in vivoゲノム編集です。

これは基礎研究だけでなく、
治療技術としての実装段階に入っています。


1. in vivo編集の本質的課題

最大の課題はただ一つです。

編集酵素を標的細胞にどう届けるか?

DNAを正確に切る・書き換える技術はすでに存在します。
問題は「送達(delivery)」です。


2. ウイルスベクター ― AAV

最も広く利用されているのが

Adeno-associated virus(AAV)

です。


AAVの特徴

  • 病原性が低い
  • 分裂しない細胞にも感染可能
  • 比較的安全性が高い

特に:

  • 肝臓
  • 網膜
  • 筋肉
  • 神経

への送達に強みがあります。


制限

  • 積載容量が小さい(約4.7 kb)
  • Cas9が大きい
  • 免疫反応の問題

このため、小型Cas9の利用や、二分割ベクター戦略が用いられています。


3. 非ウイルス系送達 ― LNP

mRNAワクチンで一躍有名になった

Lipid nanoparticle(LNP)

も重要な技術です。


LNPの特徴

  • mRNAを封入可能
  • 一過性発現
  • 免疫原性が比較的低い
  • 大量生産が可能

主に肝臓への送達効率が高いです。


4. in vivo編集の実例

現在、臨床応用が進んでいる分野:

  • 遺伝性肝疾患
  • 血液疾患
  • 眼科疾患

特に肝臓は:

  • LNPが自然に集積
  • 高い編集効率
  • 生検で評価可能

という理由で先行しています。


5. in vivo特有の課題

① オフターゲット

体内では全細胞を完全に解析できません。
そのため安全性評価が極めて重要です。


② モザイク

全細胞が編集されるわけではありません。
治療効果に必要な編集率が重要になります。


③ 免疫応答

  • Cas9に対する既存免疫
  • AAVに対する中和抗体

これらが臨床応用の大きな壁です。


6. ベースエディター・プライム編集との統合

DSBを伴わない編集技術は、

  • 染色体異常リスク低減
  • 安全性向上

の観点から、in vivo応用と非常に相性が良いと考えられています。

現在は、

  • 小型エディター開発
  • 高効率LNP改良
  • 組織特異的プロモーター利用

が活発に研究されています。


7. 概念的転換点

in vivoゲノム編集は、

「モデル作製技術」から「治療技術」への転換

を意味します。

これは分子生物学の枠を超え、

  • 臨床医学
  • 薬学
  • 倫理学
  • 社会制度

と密接に関わる段階に入ったことを示します。


まとめ

in vivo遺伝子改変の鍵は:

  • 送達技術
  • 安全性
  • 効率

技術的ブレイクスルーはすでに起きていますが、
実装には慎重な検証が不可欠です。

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