インスリン発見の歴史|糖尿病を救った医学史最大の発見(1923年ノーベル生理学・医学賞)

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糖尿病はかつて「死の病」だった

現在、糖尿病は世界で最も患者数の多い慢性疾患の一つです。

しかし20世紀初頭まで、糖尿病は

ほぼ確実に死に至る病気

でした。

特に

1型糖尿病

は非常に重い病気でした。

この病気では

  • インスリンが作られない
  • 血糖値が異常に上昇する

ため、患者は数年以内に死亡してしまいました。

子供の場合は

診断から1〜2年以内に死亡する

ことが一般的でした。

この状況を大きく変えたのが

インスリンの発見

です。

1923年、この発見により

Frederick Banting

John Macleod

がノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

しかし、この発見の裏には

多くの研究者の努力と劇的な研究ドラマがありました。


糖尿病の研究はいつ始まったのか

糖尿病は古代から知られていました。

紀元前の医学文献には

  • 尿が甘い
  • 尿量が多い

といった症状が記録されています。

糖尿病(diabetes mellitus)の語源は

  • diabetes:流れ出る
  • mellitus:蜂蜜のように甘い

という意味です。

つまり

甘い尿が大量に出る病気

という意味です。


膵臓の役割の発見

糖尿病研究が大きく進んだのは

19世紀後半です。

1889年、ドイツの研究者

Oskar Minkowski

Joseph von Mering

が重要な実験を行いました。

彼らは犬の

膵臓(pancreas)

を切除しました。

すると

  • 血糖値上昇
  • 多尿
  • 体重減少

などの症状が現れました。

これはまさに

糖尿病

でした。

つまり

膵臓は血糖を調節する

臓器であることがわかったのです。


ランゲルハンス島

膵臓には特殊な細胞があります。

1869年に

Paul Langerhans

が発見しました。

これが

ランゲルハンス島

です。

この細胞が

血糖調節物質

を作るのではないかと考えられました。

しかしその物質を分離することは

非常に困難でした。


なぜインスリンは発見できなかったのか

膵臓は

2つの機能を持っています。


消化酵素


ホルモン分泌

しかし消化酵素は

タンパク質を分解します。

つまり

膵臓から抽出すると

ホルモンも分解されてしまう

のです。

このため

多くの研究者が挑戦しましたが

インスリンを抽出できませんでした。


Bantingのアイデア

1920年

若い外科医

Frederick Banting

がある論文を読みました。

そこには

膵管が閉塞すると

消化酵素細胞が萎縮する

という報告がありました。

そこでBantingは考えました。

もし

膵管を閉じれば

消化酵素細胞が消える。

すると

ランゲルハンス島だけ残る

のではないか?

その状態なら

ホルモンを抽出できるかもしれない。


トロント大学での研究

Bantingは

University of Toronto

で研究を始めました。

研究を支援したのが

生理学者

John Macleod

です。

研究助手として参加したのが

医学生

Charles Best

でした。


犬を使った実験

研究チームは

犬を使った実験を行いました。

手順は以下です。

1
膵管を結紮

2
数週間待つ

3
膵臓抽出液を作る

4
糖尿病犬に注射


奇跡の結果

1921年

ついに結果が出ました。

糖尿病の犬に

膵臓抽出液を注射すると

血糖値が劇的に低下

しました。

これは

世界初の

インスリン治療

でした。


インスリンの精製

しかし問題がありました。

抽出液は

不純物が多く

毒性もありました。

そこで研究チームに

生化学者

James Collip

が加わりました。

Collipは

インスリンの精製方法を開発しました。

これにより

安全な注射薬が作られました。


最初の患者

1922年

最初の患者が治療されました。

それは

14歳の少年

Leonard Thompson

でした。

彼は重度の糖尿病で

死にかけていました。

最初の注射では

効果は限定的でした。

しかし精製インスリンを使うと

血糖値が正常化

しました。

これは医学史上

最も劇的な治療の一つでした。


世界中に広がる治療

インスリン治療は

すぐに世界中に広まりました。

1920年代には

多くの患者が救われました。

それまで

糖尿病の子供は

数年で死亡していました。

しかしインスリンにより

普通に生活できる

ようになったのです。


ノーベル賞

1923年

ノーベル生理学・医学賞は

  • Frederick Banting
  • John Macleod

に授与されました。

しかしこの決定は

大きな議論を呼びました。


ノーベル賞の論争

Bantingは怒りました。

彼は

Bestが受賞していない

ことに不満を持ちました。

そのため

賞金の半分を

Bestに分けました。

一方

Macleodは

Collipに分けました。

つまり

実際には

4人の研究者

で共有された形になりました。


現代医学への影響

インスリン発見は

医学史最大の発見の一つです。

現在

糖尿病患者は

世界で

5億人以上

います。

その多くが

インスリン治療を受けています。


バイオ医薬品の始まり

インスリンは

最初の

バイオ医薬品

でもあります。

現在では

  • 遺伝子組換えインスリン
  • インスリンアナログ

などが使われています。


ノーベル賞研究の連鎖

インスリン研究は

その後の多くの研究につながりました。

例えば

  • ホルモン研究
  • 受容体研究
  • シグナル伝達

などです。

これらは

現代生命科学の中心テーマです。


まとめ

インスリン発見は

医学史の転換点でした。

この研究により

糖尿病は

致死的な病気

から

管理可能な慢性疾患

へと変わりました。

1923年のノーベル医学賞は

まさに

人類の命を救った研究

と言えるでしょう。


次回

次回は

1924〜1927年

のノーベル医学賞を解説します。

ここでは

  • 神経伝達研究
  • 代謝研究
  • ビタミン研究

など

現代生命科学の基礎

が登場します。

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