1960年代初頭:分子生物学が医学を変え始めた時代
1960〜1963年は、1950年代に確立された分子生物学が
- 免疫学
- 神経科学
- 遺伝学
と融合し、実際の医学に直接影響を与え始めた時代です。
この時期に確立された概念は、現在の
- 移植医療
- 免疫療法
- 遺伝子研究
の基礎となっています。
1960年
免疫寛容の発見
1960年のノーベル生理学・医学賞は
- Frank Macfarlane Burnet
- Peter Brian Medawar
に授与されました。
自己と非自己を区別する免疫系
彼らは
- Immune tolerance
という概念を提唱し、
胎生期に免疫系が自己を学習する
ことを示しました。
これは臓器移植における
- 拒絶反応
- 免疫抑制療法
の理論的基盤となりました。
1961年
神経伝達物質とシナプス機構
1961年のノーベル生理学・医学賞は
- Georg von Békésy
に授与されました。
内耳と聴覚の機械的機構
Békésyは
- Cochlea
内での振動伝達を解析し、音波がどのように周波数ごとに分離されるかを明らかにしました。
これにより聴覚は
物理振動 → 神経信号
へ変換される過程として理解されるようになりました。👂
1962年
DNA構造のノーベル賞受賞
1962年のノーベル生理学・医学賞は
- James Watson
- Francis Crick
- Maurice Wilkins
に授与されました。
二重らせん構造の意義
彼らが提唱した
- DNA double helix
は、
- 遺伝子複製
- 突然変異
- 遺伝情報保存
をすべて説明できるモデルでした。
この発見により、生物学は完全に
情報科学的な学問
へと変化します。
1963年
神経細胞のイオンチャネル研究
1963年のノーベル生理学・医学賞は
- John Carew Eccles
- Alan Lloyd Hodgkin
- Andrew Fielding Huxley
に授与されました(※実際の授与は1963年)。
シナプス伝達の電気生理学
彼らは神経細胞間での
- 電気的シナプス
- 化学的シナプス
の違いを明確にし、
神経回路の情報処理が
イオンチャネルの開閉
によって制御されることを示しました。
遺伝暗号解読の始まり(ノーベル賞外の重要研究)
1961年には
- Marshall Warren Nirenberg
- Heinrich Matthaei
が
- Genetic code
の最初の解読(UUU→フェニルアラニン)に成功しました。
これは1968年のノーベル賞へとつながります。
この4年間の科学的意義
1960〜1963年は、生命科学が
免疫・情報・神経
という三大システムを分子レベルで理解し始めた時代でした。
① 免疫学の理論的完成
免疫寛容の概念により、
免疫系は単なる防御ではなく
学習する生体システム
として理解されるようになりました。
② DNA研究の決定的確立
DNA二重らせんのノーベル賞受賞は、
分子生物学が生物学の中心に位置づけられた象徴的出来事でした。
③ 遺伝暗号の解読開始
遺伝子がどのようにタンパク質配列へ翻訳されるかが解明され始め、
生命現象が
完全に情報の言語として理解可能
になっていきます。
まとめ
| 年 | 受賞者 | 主題 |
|---|---|---|
| 1960 | Burnet & Medawar | 免疫寛容 |
| 1961 | von Békésy | 聴覚機構 |
| 1962 | Watsonら | DNA構造 |
| 1963 | Ecclesら | 神経シナプス |
この4年間は、
免疫・遺伝・神経
という生命科学の三大情報系が出揃った時代でした。
次回予告
次回は
第16回:1964〜1967年
を解説します。
ここでは
- 遺伝暗号の完全解読
- 代謝制御の分子機構
- ホルモン作用の受容体理論
など、分子医学が本格的に確立していく時代に入ります。