1960年代後半〜1970年代初頭:分子医学の精密化
1968〜1971年は、1960年代に確立された分子生物学がさらに発展し、
- 遺伝情報の解読
- 免疫分子の構造
- 神経伝達の多様性
が詳細に理解され始めた時代です。
この時期には
生命現象を“構造と機能”で結びつける研究
が中心となります。
1968年
遺伝暗号のノーベル賞
1968年のノーベル生理学・医学賞は
- Marshall Warren Nirenberg
- Har Gobind Khorana
- Robert William Holley
に授与されました。
遺伝情報が言語として解読された
彼らは
- Genetic code
を完全に解読し、
- コドン(3塩基)
- アミノ酸
の対応関係を確立しました。
これにより生命は
DNAという「言語」で記述されたシステム
として理解されるようになりました。🧬
1969年
酵素と代謝制御の分子機構
1969年のノーベル生理学・医学賞は
- Max Delbrück
- Alfred Hershey
- Salvador Luria
に授与されました。
ウイルスと遺伝の関係
彼らはバクテリオファージを用いて、
- 遺伝子の複製
- 突然変異
- 遺伝情報の伝達
を解析しました。
この研究は
分子遺伝学の実験体系の確立
を意味します。
1970年
神経伝達とシナプスの研究
1970年のノーベル生理学・医学賞は
- Julius Axelrod
- Ulf von Euler
- Bernard Katz
に授与されました。
神経伝達物質の制御
彼らは
- Neurotransmitter
の
- 放出
- 再取り込み
- 分解
の機構を解明しました。
特にAxelrodの研究は、
現在の
- 抗うつ薬
- 向精神薬
の開発に直接つながっています。
1971年
視覚情報処理の神経回路
1971年のノーベル生理学・医学賞は
- Earl Wilbur Sutherland Jr.
に授与されました。
セカンドメッセンジャーの発見
Sutherlandは
- cAMP
を発見し、
ホルモンが細胞内でどのように作用するかを説明しました。
シグナル伝達の概念
この発見により、
細胞は
外部刺激 → 内部シグナル → 応答
という流れで動く
情報処理システム
であることが明確になりました。
この4年間の科学的意義
1968〜1971年は、生命科学が
遺伝・神経・シグナル伝達
の三つを統合した時代でした。
① 遺伝情報の完全解読
遺伝暗号の完成により、
DNAからタンパク質への流れが完全に理解されました。
② 神経伝達の分子機構
神経は単なる電気信号ではなく、
精密な化学制御システム
であることが明らかになりました。
③ 細胞内シグナル伝達の確立
cAMPの発見により、
細胞は
情報処理装置
として理解されるようになりました。
まとめ
| 年 | 受賞者 | 主題 |
|---|---|---|
| 1968 | Nirenbergら | 遺伝暗号 |
| 1969 | Delbrückら | 分子遺伝学 |
| 1970 | Axelrodら | 神経伝達 |
| 1971 | Sutherland | cAMP |
この時代は
生命=情報システム
という現代生物学の核心が完成した時代でした。
次回予告
次回は
第18回:1972〜1975年
を解説します。
ここでは
- 細胞膜構造モデル
- 免疫グロブリンの多様性
- DNA組換え技術の誕生
など、バイオテクノロジー時代の幕開けに入ります。