1980年代初頭:バイオ医療の産業化が始まる時代
1980〜1983年は、
- 遺伝子工学
- 免疫工学
- 分子薬理学
が融合し、
医学が産業として急速に発展し始めた時代
です。
この時期の発見は、現在の
- バイオ医薬品
- 抗体医薬
- 分子標的治療
の基盤となっています。
1980年
炎症とプロスタグランジン
1980年のノーベル生理学・医学賞は
- Bengt I. Samuelsson
- Sune K. Bergström
- John Robert Vane
に授与されました。
脂質メディエーターの発見
彼らは
- Prostaglandin
の構造と作用を解明しました。
薬理学への影響
この研究により、
- アスピリンの作用機序
- 炎症・痛み・発熱の分子機構
が明らかになりました。
1981年
視覚情報処理の神経機構
1981年のノーベル生理学・医学賞は
- David Hubel
- Torsten Wiesel
- Roger Wolcott Sperry
に授与されました。
視覚野の機能局在
HubelとWieselは
視覚野のニューロンが
- 特定の方向
- 特定の形
に反応することを発見しました。
脳の情報処理原理
Sperryは左右半球の機能分化を示し、
脳が
並列処理システム
として機能することを明らかにしました。
1982年
遺伝子の可動性(トランスポゾン)
1982年のノーベル生理学・医学賞は
- Barbara McClintock
に授与されました。
遺伝子は動く
McClintockはトウモロコシを用いた研究で
- Transposon
を発見しました。
ゲノムは固定ではなかった
この発見により、
ゲノムは
静的な情報ではなく動的に変化するシステム
であることが明らかになりました。
1983年
モノクローナル抗体技術
1983年のノーベル生理学・医学賞は
- Georges Köhler
- César Milstein
- Niels Kaj Jerne
に授与されました。
ハイブリドーマ技術
KöhlerとMilsteinは
- Monoclonal antibody
を作製する
ハイブリドーマ法を開発しました。
医学と産業へのインパクト
この技術により
- 診断薬
- 治療薬
- 研究ツール
として抗体を大量生産できるようになりました。
これは現在の
抗体医薬産業の出発点
です。💊
この4年間の科学的意義
1980〜1983年は、医学が
分子理解 → 工学応用 → 産業化
へと進んだ時代でした。
① 炎症・薬理の分子基盤
プロスタグランジン研究により、
薬の作用は
分子レベルで設計可能
になりました。
② 神経情報処理の解明
視覚研究により、
脳は
特徴抽出と統合を行う情報処理装置
として理解されるようになりました。
③ ゲノムの動的概念
トランスポゾンの発見は、
遺伝子変異や進化の新しい理解をもたらしました。
④ 抗体医薬の誕生
モノクローナル抗体は、
現在のバイオ医薬品市場の中核技術となっています。
まとめ
| 年 | 受賞者 | 主題 |
|---|---|---|
| 1980 | Samuelssonら | プロスタグランジン |
| 1981 | Hubelら | 視覚と脳 |
| 1982 | McClintock | トランスポゾン |
| 1983 | Köhlerら | モノクローナル抗体 |
1980年代初頭は
分子生物学が医療技術として実装された時代
でした。
次回予告
次回は
第21回:1984〜1987年
を解説します。
ここでは
- 免疫遺伝子(MHC)
- 成長因子
- 神経成長因子
など、細胞間シグナルと免疫の統合理解が進む時代に入ります。