はじめに|なぜ統計学が研究に不可欠なのか
大学院で研究を進めるうえで、統計解析は避けて通れない壁です。
しかし、「t検定と分散分析の違いが曖昧」「どの解析を使うべきか分からない」という悩みを持つ方も多いのではないでしょうか?
本記事では、大学院生が研究で最低限おさえるべき統計の基礎から応用までをわかりやすく解説します。
これを読めば、統計が“なんとなくの道具”から“論文を支える武器”になります。
統計学の基本用語を理解しよう
平均、中央値、標準偏差
- 平均:データの中心を示す代表値。
- 中央値:外れ値に強い指標。偏った分布ではこちらが有効。
- 標準偏差:データの散らばり具合(分布の広がり)を定量化。
有意差とp値とは?
- p値が0.05未満なら「有意差あり」と判断されますが、**「意味のある差」ではなく「偶然ではなさそうな差」**である点に注意。
研究でよく使う統計手法5選
1. t検定(対応あり・なし)
2群の平均を比較。例えば、治療前後の変化を調べるときに使います。
- 対応あり:同じ被験者の前後変化
- 対応なし:異なる2群の比較(例:治療群 vs 対照群)
2. 分散分析(ANOVA)
3群以上の平均差を調べたいときに使います。
- 一元配置:1つの要因のみ
- 二元配置:2つの要因+交互作用も評価可能
3. 回帰分析(線形・重回帰)
変数間の関係性(予測・因果)を探る手法。
研究の中で**「何が影響しているのか」**を定量的に示したいときに有効。
4. カイ二乗検定
カテゴリデータの差を評価。
「薬Aと薬Bで副作用の発現率が違うか?」などに使われます。
5. Wilcoxon検定 / Mann-Whitney U検定
ノンパラメトリック検定(正規分布しないデータ用)。
t検定の代わりとして使われることが多く、特にサンプルサイズが少ない場合に有効です。
統計ソフトの選び方と使い方
R / RStudio:無料&自由度が高い
Rはオープンソースでありながら、プロフェッショナルな統計解析が可能です。
スクリプトベースなので再現性にも優れます。
SPSS:GUIで直感的
初心者でも使いやすく、教育現場でよく使われています。多変量解析も簡単にできる点が魅力。
GraphPad Prism:生命科学研究者向け
グラフ作成と統計解析が一体化しており、論文用の図表作成に最適。
統計解析でよくあるミスと回避法
p値だけに頼る解析
効果量や信頼区間の報告も忘れずに。
「p=0.049」と「p=0.051」の差に過剰反応しないことが重要です。
仮説検定の乱用
「有意差あり=因果関係がある」ではありません。
実験デザインと解釈がセットで重要です。
n数不足のまま解析
統計的検出力(Power)を事前に設計して、サンプル数を決めてから実験を行いましょう。
論文に統計解析を記載するときのポイント
- 使用した統計手法と理由を明記
- ソフトウェア名とバージョンを書く(例:R v4.3.2)
- 有意水準(例:p < 0.05)と効果量をセットで記載
- データの正規性をチェックしたかどうかも記述(Shapiro-Wilk検定など)
まとめ|統計を使いこなすことで研究の信頼性が上がる
統計解析は、論文の信頼性を裏付ける強力なツールです。
意味を理解せずに使うと逆効果にもなりますが、基本を押さえればむしろあなたの研究を“格上げ”してくれる存在になります。
研究計画の段階から、どの解析が適切かを考える習慣を身につけましょう。