はじめに:RT-qPCRって何?
RT-qPCR(アールティー・キューピーシーアール)とは、
「RNAをDNAに変換し、それをリアルタイムで定量するPCR」
のことです。
正式には「Reverse Transcription quantitative PCR(逆転写定量PCR)」と呼ばれ、RNAの量を正確に測るために使われています。
どういうときにRT-qPCRを使うの?
- ウイルスRNA(例:新型コロナウイルス)を検出
- 細胞の**遺伝子発現量(mRNA)**を調べる
- 遺伝子治療や創薬の効果検証など、医療・バイオ研究の必須技術
RNAはそのままではPCRできないため、まずDNA(cDNA)に変換してからPCRを行うのがポイントです。
RT-qPCRの基本ステップ
RT-qPCRは、以下の2段階の反応で行われます:
① 逆転写(RT:Reverse Transcription)
RNAからDNA(cDNA)を作るステップ
→ 酵素「逆転写酵素(リバーストランスクリプターゼ)」を使用
② qPCR(リアルタイムPCR)
cDNAを蛍光を使ってリアルタイムに増幅・定量するステップ
→ 蛍光色素(SYBR Green)やプローブ(TaqMan)を使用
RNA → cDNA → DNAをリアルタイムで測定!
RNA(例:mRNA)
↓ 逆転写(RT)
cDNA(一本鎖のDNA)
↓ qPCR
定量(Ct値で評価)
RNAの量が多いほど、できるcDNAも多くなり、qPCRでのCt値は小さくなります。
Ct値(Cycle threshold)とは?
qPCRと同様に、RT-qPCRでもCt値が重要です。これは、
「蛍光が検出され始めるサイクル数」
のことで、Ct値が小さいほど、もともとのRNA量が多かったことを意味します。
RT-qPCRでよく使う試薬と装置
- 逆転写酵素(例:SuperScript, ReverTra Aceなど)
- SYBR Green:DNAに結合して蛍光を発する色素
- TaqManプローブ:特異的なDNAにだけ反応する蛍光プローブ
- サーマルサイクラー(リアルタイムPCR装置)
RT-qPCRの用途まとめ
✅ 感染症検査(ウイルスRNAの検出)
✅ 遺伝子発現解析(mRNAの比較)
✅ miRNA解析、lncRNA解析など
✅ 治療効果・薬剤反応のモニタリング
RT-qPCRとqPCR、通常のPCRの違い
項目 | 通常のPCR | qPCR | RT-qPCR |
---|---|---|---|
測定対象 | DNA | DNA | RNA(→ cDNA) |
測定 | 定性(ある/なし) | 定量(量) | 定量(RNA量) |
特徴 | DNAを増やす | DNAの量を測る | RNAをDNAに変えて測る |
まとめ:RT-qPCRはRNAの“量”を測る技術!
🔹 RT-qPCRはRNA(特にmRNA)をリアルタイムで定量する方法
🔹 逆転写 → qPCRの2段階で行う
🔹 Ct値でRNA量の差を比較できる
🔹 感染症、がん研究、遺伝子発現解析に欠かせない
よくある質問(FAQ)
Q. RNAはそのままPCRできますか?
→ できません。必ずcDNAに変換(逆転写)してからPCRします。
Q. RNAの定量は何に使えるの?
→ 遺伝子の「発現量」がわかるため、病気の診断や治療効果の確認に使われます。
Q. qPCRとRT-qPCRの違いは?
→ 測定対象が違います。qPCRはDNA、RT-qPCRはRNA(をcDNAにして)を測ります。