はじめに:ウエスタンブロットって何?
「ウエスタンブロット(Western blot)」は、特定のタンパク質を検出・確認する実験法です。
生物学や医学の研究では、遺伝子(DNA・RNA)だけでなく、「本当にそのタンパク質が作られているか?」「どのくらいあるのか?」を調べることが重要です。
ウエスタンブロットは、まさに**“タンパク質レベル”での証明手段**として使われます。
ざっくり言うとどういう実験?
簡単に言えば、
「細胞や組織から取り出したタンパク質を、サイズで分けて、目的のタンパク質を抗体で検出する方法」
です。
ウエスタンブロットの目的と特徴
✅ 目的のタンパク質があるかを調べる
✅ そのタンパク質がどれくらい発現しているか測る
✅ サイズ(分子量)や修飾(リン酸化など)の違いも検出可能
RNAレベルで発現していても、タンパク質が作られていないこともあります。ウエスタンブロットで**“最終産物”の確認**ができます。
ウエスタンブロットの流れ:5つのステップ
① タンパク質抽出
細胞や組織を破砕して、中のタンパク質を取り出します。
② SDS-PAGEで分離(電気泳動)
ポリアクリルアミドゲルを使って、分子量の違いでタンパク質を分けるステップ。
→ 小さいタンパク質ほど速く移動します。
③ 転写(ブロッティング)
ゲル上のタンパク質を膜(PVDFやニトロセルロース)に移す工程です。
→ この膜上で検出します。
④ 抗体で検出
目的のタンパク質に**特異的にくっつく抗体(一次抗体)**を使います。さらに、二次抗体(発光酵素付き)で増幅します。
⑤ 発光・可視化
発光試薬(ECL)で発光させて、バンドとして検出。フィルムやCCDカメラで撮影します。
イメージで理解するウエスタンブロット
[細胞] → タンパク質抽出
↓
電気泳動(SDS-PAGE)
↓
膜に転写(ブロッティング)
↓
抗体でターゲットを検出
↓
発光してバンド出現!
よくあるQ&A(FAQ)
Q. バンドの濃さは何を意味しますか?
→ 濃いバンドほど、そのタンパク質が多く存在することを示します(ただし定量には注意が必要)。
Q. 複数のバンドが出たらどう解釈すればいい?
→ 修飾(リン酸化、分解)やスプライスバリアントなどが考えられます。非特異的反応も疑いましょう。
Q. ハウスキーピングタンパク質(β-actin, GAPDHなど)はなぜ使う?
→ 総タンパク量のコントロール(正規化)に使います。
応用例・活用場面
- ✅ 遺伝子導入後、タンパク質が発現しているか確認
- ✅ タンパク質のリン酸化や分解の確認
- ✅ がん細胞と正常細胞での発現比較
- ✅ 創薬研究での効果確認
ウエスタンブロットの注意点
- 抗体の特異性が最重要
- サンプル量やローディングのバラつきに注意
- バンドの位置(分子量)で判定
まとめ:ウエスタンブロットは“タンパク質検出の王道”
🔹 ウエスタンブロットは特定のタンパク質を検出する実験法
🔹 電気泳動 → ブロッティング → 抗体検出 → 発光
🔹 発現の有無、量、修飾を確認できる
🔹 分子生物学や医学研究に欠かせない基礎技術!