🟢 細胞とは何か?——生命の最小単位
私たちの体は、数十兆個の「細胞」からできています。
細胞は生命の基本単位であり、単独でも生命活動を営むことができる構造です。細胞が自己複製し、物質代謝を行う能力を持つことが、生命の最小条件といえるのです。
🟢 原核細胞と真核細胞の違い
🔹 原核細胞(Prokaryotes)
- 小型で構造が単純(1〜5µm程度)
- 核膜がない(DNAは細胞質内にむき出しの状態)
- 代表例:大腸菌、枯草菌などの細菌類
🔹 真核細胞(Eukaryotes)
- 核膜で囲まれた「核」を持つ
- ミトコンドリアやゴルジ体などの膜構造を持つ細胞小器官が存在
- 動物・植物・真菌など、私たちの体もすべて真核細胞から構成される
🟢 すべての細胞は共通祖先から進化した
現存するすべての細胞は、**約38億年前に誕生した共通祖先細胞(LUCA)**から進化したと考えられています。
その証拠として、すべての細胞は
- DNAを遺伝物質として使い
- ATPをエネルギー通貨として用い
- リボソームでタンパク質を合成する
といった、基本的な仕組みを共有しています。
🟢 ゲノムとは何か?その役割と進化
「ゲノム」とは、ある細胞が持つ**すべての遺伝情報(DNA)**のことを指します。
真核生物では染色体の形で核内に保存されており、そこにはタンパク質をつくる設計図だけでなく、
- 発現タイミングの調整
- 細胞の分化やシグナル応答
- 遺伝子同士の調和的な制御
といった、生命を制御する高度な情報も含まれています。
🔹 ヒトゲノムの特徴
- 約30億塩基対のDNAから成る
- 2万〜2万5千個の遺伝子
- たった1.5%のみがタンパク質をコード(残りは調節領域やノンコーディングRNAなど)
🟢 細胞の多様性とモデル生物
細胞は同じ基本構造を持ちつつ、驚くほど多様な形や機能を持ちます。
例えば:
- 神経細胞:長い軸索を持ち、電気信号を伝える
- 筋細胞:収縮して運動を起こす
- 植物細胞:細胞壁と葉緑体を持つ
このような細胞の研究には「モデル生物」が使われます。代表例は:
- 大腸菌(E. coli):原核細胞の代表
- 出芽酵母(S. cerevisiae):真核細胞の基本構造を持つ
- 線虫(C. elegans):発生・神経・細胞死の研究に最適
- マウス:哺乳類モデル、生体レベルの研究が可能
🟢 まとめ
- 細胞はすべての生命の基本単位である
- 原核細胞と真核細胞の違いは、構造と複雑さにある
- ゲノムはDNAから構成され、生命活動を制御する情報の宝庫
- 細胞は共通祖先から進化し、多様な機能を獲得している
- モデル生物は細胞の仕組みを理解する上で重要なツール
🟢 次回予告|第2章「Cell Chemistry and Bioenergetics(細胞の化学とエネルギー)」
次回は、細胞を形づくる化学的要素(水、炭素、分子間結合)と、細胞が生きていくためのエネルギー代謝の基本を解説していきます。