アウエルバッハ神経叢とマイスナー神経叢 ― 臨床での意義

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腸管神経叢の臨床的重要性

腸管神経系は「第二の脳」とも呼ばれ、消化管の運動・分泌を自律的に調整します。アウエルバッハ神経叢(運動調節)とマイスナー神経叢(分泌・血流調整)の機能異常は、消化管疾患の病態に直結します。


アウエルバッハ神経叢の障害と臨床

  • ヒルシュスプルング病(先天性巨大結腸症)
    • 新生児・小児で代表的
    • アウエルバッハ神経叢やマイスナー神経叢の神経節細胞が欠損
    • 排便困難、慢性便秘、腸閉塞を起こす
    • 治療は無神経節腸管の切除
  • アカラシア(食道運動障害)
    • 食道下部のアウエルバッハ神経叢障害により、食道蠕動と下部食道括約筋の弛緩が障害
    • 嚥下困難・逆流を主症状とする
    • 治療は内視鏡的バルーン拡張や外科的切開術
  • パーキンソン病に伴う腸管運動障害
    • 腸管のアウエルバッハ神経叢にもレビー小体が沈着
    • 慢性便秘や排便障害の一因

マイスナー神経叢の障害と臨床

  • ヒルシュスプルング病
    • マイスナー神経叢も同時に欠損するため、分泌・血流調整も障害され便が固くなる
  • 虚血性腸炎
    • 粘膜下層の血流調整に関与するマイスナー神経叢の障害が関与
    • 血流低下で粘膜壊死・腹痛・血便を引き起こす
  • 機能性消化管障害(IBSなど)
    • マイスナー神経叢の感覚受容機能が過敏化し、腸管の伸展刺激に対して腹痛や便通異常が起こると考えられる

臨床の現場での意識ポイント

  • 小児科:ヒルシュスプルング病を疑う便秘・腸閉塞症状
  • 消化器内科:アカラシアや機能性消化管障害の診断における背景理解
  • 高齢者医療:慢性便秘・虚血性腸炎のリスク因子として腸管神経叢機能の低下を考慮

まとめ

  • アウエルバッハ神経叢は主に「運動障害」、マイスナー神経叢は「分泌・血流障害」と関連
  • 神経叢の障害はヒルシュスプルング病やアカラシアといった明確な疾患から、便秘やIBSといった身近な症状まで幅広く関与
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