蛍光染色(Fluorescent Staining)の基本と応用

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蛍光染色とは?

蛍光染色(fluorescent staining)は、蛍光色素を分子や細胞構造に結合させ、特定の波長の光で励起することで観察する方法です。
従来の発色による染色(H&EやIHC)と異なり、複数の標的を同時に色分けして解析できる のが大きな特徴です。

研究の分野では特に多用され、細胞内局在の解析やシグナル伝達の可視化に必須の手法となっています。


蛍光染色の代表的な種類

1. DAPI染色(核染色)

  • 対象:DNA(核)
  • 特徴:青色の蛍光を発する
  • 用途:細胞数のカウント、核の形態観察、免疫蛍光のカウンターステイン

2. 単一蛍光免疫染色

  • 方法:一次抗体に結合した二次抗体を蛍光標識し、特定のタンパク質を検出
  • 用途:標的分子の発現確認、細胞内局在の可視化

3. 多重蛍光染色(Multiplex staining)

  • 方法:異なる蛍光色素を用いて複数の分子を同時に染め分け
  • 用途:細胞間相互作用や複数マーカーの共発現解析
  • :Protein A(緑)、Protein B(赤)、DAPI(青)を同一切片で同時観察

蛍光染色の観察方法

  • 蛍光顕微鏡:基本的な観察装置
  • 共焦点レーザー顕微鏡:三次元的な観察が可能、組織の奥行き解析に有用
  • 多光子顕微鏡:深部組織を非侵襲的に観察可能

蛍光染色の利点と注意点

利点

  • 複数の標的を同時に解析できる
  • 細胞内の局在を詳細に把握できる
  • 高感度で微量な分子も検出可能

注意点

  • 褪色(フォトブリーチング)が起こりやすい
  • 自家蛍光(背景信号)の影響を受けやすい
  • 顕微鏡装置やフィルター設定に熟練が必要

蛍光染色の応用

  • 研究:幹細胞マーカーの共発現、シグナル経路解析、腫瘍微小環境の可視化
  • 臨床診断:感染症の迅速診断、腫瘍組織のマーカー評価
  • 最先端技術:空間トランスクリプトミクスや多重オミクス解析との統合

まとめ

蛍光染色は、細胞や組織を「色分け」して解析できる強力な手法です。

  • DAPI染色:核の基本観察
  • 免疫蛍光染色:特定タンパク質の検出
  • 多重蛍光染色:複数分子の同時解析

H&E染色やIHCを超えて、分子生物学的な理解を深める研究に欠かせない技術となっています。

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