器官形成とは
**器官形成(organogenesis)**は、原腸形成と神経管形成を経た胚が、三胚葉を基盤にして多様な臓器や組織をつくる段階です。
この過程で、細胞の移動・分化・相互作用が高度に組み合わさり、臓器ごとの独自の構造が生まれていきます。
外胚葉由来の器官
外胚葉からは、主に「外界との接触」や「情報処理」に関わる器官が発生します。
- 神経系(脳・脊髄・末梢神経)
- 感覚器(眼、耳、鼻など)
- 皮膚表皮、毛、爪、汗腺
- 歯のエナメル質
中胚葉由来の器官
中胚葉は「支持・運動・循環」に関わる器官を形成します。
- 骨格・筋肉
- 循環器系(心臓・血管・血液細胞)
- 泌尿生殖器系(腎臓、尿路、生殖腺)
- 体腔(胸腔・腹腔)を覆う漿膜
内胚葉由来の器官
内胚葉は「内部環境と代謝」に直結する臓器を生みます。
- 消化管上皮(胃・腸など)
- 呼吸器系(肺・気管・気管支)
- 肝臓・膵臓
- 甲状腺・副甲状腺・胸腺
器官形成の特徴
- 誘導(induction)
 ある組織が別の組織の発生を引き起こす現象(例:レンズ形成の際の眼杯による誘導)。
- 形態形成運動(morphogenetic movements)
 細胞が移動・折りたたみ・融合することで臓器形態が作られる。
- 時間的・空間的制御
 遺伝子発現とシグナル伝達が精密に制御されている。
臨床との関連
- 器官形成期(ヒトでは妊娠3~8週)は催奇形因子に最も敏感な時期
- 感染、薬剤、放射線、アルコールなどが先天奇形の原因になりうる
- 幹細胞研究では、器官形成を模倣したオルガノイド培養が盛んに行われている
まとめ
- 器官形成は、三胚葉が多様な臓器・組織へ分化する段階
- 外胚葉 → 神経・感覚・皮膚、中胚葉 → 骨格・循環・泌尿生殖系、内胚葉 → 消化・呼吸・代謝器官
- この時期は発生学的にも臨床的にも最重要ポイント
👉 本記事は「発生学シリーズ」の第6回です。これまでの流れ(概要 → 受精と卵割 → 胚盤胞形成と着床 → 原腸形成と胚葉分化 → 神経管形成)を通して読むことで、発生学の基礎から器官形成まで一連の流れを体系的に学べます。
