表皮の発生
皮膚は「外胚葉由来の表皮」と「中胚葉由来の真皮」から構成されます。
- 4週ごろ:単層の外胚葉細胞が胎児を覆う。
- 8週ごろ:基底層と周囲の細胞が分化し始める。
- 20週ごろ:角化層を持つ多層の表皮が完成。胎児は「胎脂(vernix caseosa)」に覆われ、羊水から保護されます。
毛の発生
毛は表皮の陥入から始まります。
- 毛芽形成(9〜12週):表皮が真皮に陥入して「毛芽」を作る。
- 毛球形成:毛芽の基部が膨らみ、毛母細胞が増殖。毛包が形成される。
- 毛の伸長:毛母細胞が角化して毛幹となり、皮膚表面に伸びる。
毛包には「毛乳頭」「皮脂腺」「立毛筋」が付属します。
爪の発生
- 10週ごろ:手足の指背側の表皮が肥厚して「爪原基」が形成。
- 14週以降:爪床の角化が進み、爪甲が伸び始める。
- 出生時:ほとんどの爪は指先まで達しています。
汗腺・乳腺
- 汗腺:胎生期後半に表皮が管状に陥入して形成されます。エクリン汗腺は出生時から機能可能。
- 乳腺:表皮が乳腺堤として肥厚し、陥入して分岐構造を作る。思春期以降にホルモン依存的に発達します。
歯の発生
歯は「外胚葉性エナメル器」と「中胚葉性歯乳頭」から作られる複合構造です。
- 歯板形成(6週ごろ):表皮が口腔内に陥入して歯板を作る。
- 蕾期 → 帽状期 → 鐘状期 と進行。
- 分化
- エナメル芽細胞(外胚葉由来) → エナメル質
- 象牙芽細胞(中胚葉由来) → 象牙質
- 歯髄・セメント質(中胚葉由来)
下垂体前葉の発生
下垂体は二重由来の器官です。
- 前葉(腺性下垂体):口腔外胚葉の陥入=ラトケ嚢から発生
- 後葉(神経性下垂体):神経外胚葉(間脳の下垂体漏斗)由来
つまり、下垂体前葉は「外胚葉由来の内分泌腺」として特別な位置づけを持ちます。
臨床との関連
- 表皮異形成症候群:毛・歯・汗腺の形成異常
- 無毛症:毛包形成不全
- 先天性無爪症:爪原基の欠如
- ラトケ嚢嚢胞:下垂体前葉の発生遺残
まとめ
- 外胚葉は表皮を形成し、そこから毛・爪・汗腺・乳腺などの付属器が派生します。
- 歯のエナメル質と下垂体前葉も外胚葉由来の特殊な器官です。
- 発生異常は皮膚疾患や内分泌疾患に直結します。