1. 発生の起源
呼吸器系は前腸内胚葉に由来します。
発生4週頃、前腸の腹側壁から 肺芽(respiratory diverticulum / lung bud) が突出し、そこから気管・気管支・肺が発生します。周囲の**側板中胚葉(臓側中胚葉)**が気道や肺胞の間質や血管系に寄与します。
2. 発生週数ごとの流れ
3〜4週:肺芽の出現
- 前腸腹側に**喉頭気管憩室(laryngotracheal diverticulum)**が形成される。
- 周囲の隆起(気管食道ヒダ)が融合し、前方は気管・後方は食道へ分離。
5週:原始肺芽の分岐
- 肺芽が二つに分岐し、右肺芽・左肺芽となる。
- これが後に右肺3葉、左肺2葉の原基になる。
6〜7週:気管支樹の発達
- 右肺芽 → 3つの二次気管支、左肺芽 → 2つの二次気管支へ分岐。
- さらに分岐を重ねて、細気管支レベルまで樹状に発達。
8〜16週:偽腺期(pseudoglandular stage)
- 気管支の分岐が進み、細気管支の形成。
- この段階ではまだガス交換能はない。
16〜24週:管状期(canalicular stage)
- 終末細気管支から呼吸細気管支へ分化。
- 周囲に毛細血管が接近し、ガス交換可能な構造が準備される。
- Ⅱ型肺胞上皮細胞が出現し、少量のサーファクタントを分泌開始。
24〜36週:囊状期(saccular stage)
- 終末嚢(primitive alveoli)が形成される。
- 毛細血管が嚢の壁に密着し、ガス交換能力が増加。
- サーファクタント産生が本格化。
36週〜出生後:肺胞期(alveolar stage)
- 生後8歳頃まで続く。
- 肺胞数は出生時に約2,000万個 → 成長に伴い約3億個に増加。
3. 発生の特徴と臨床的意義
- サーファクタント不足:出生前に十分に分泌されないと、新生児呼吸窮迫症候群(RDS)の原因になる。
- 肺分岐の異常:先天性肺嚢胞や気管食道瘻の形成につながる。
- 胎児期呼吸運動:子宮内で羊水を出し入れする運動は、肺の発達と筋肉系の成熟に不可欠。
まとめ
- 呼吸器は前腸内胚葉由来で、4週に肺芽が出現。
- その後、気管支分岐 → 偽腺期 → 管状期 → 囊状期 → 肺胞期と進行。
- 出生後も肺胞は増加し、呼吸機能の成熟が続く。