内胚葉由来の器官の発生(4)咽頭器官・甲状腺・副甲状腺・胸腺

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1. 発生の起源

  • 咽頭器官は前腸内胚葉と、それを取り囲む中胚葉・神経堤由来組織の相互作用によって形成される。
  • 咽頭嚢(pharyngeal pouches)が内胚葉由来の主要な構造で、そこから甲状腺・副甲状腺・胸腺・耳管・扁桃などが発生する。

2. 発生週数ごとの流れ

3〜4週:咽頭器官の出現

  • 原始咽頭の両側に咽頭弓(mesoderm + 神経堤由来)が形成。
  • 内側に対応する咽頭嚢が内胚葉から形成される。
  • 咽頭嚢は1〜4対あり、それぞれ異なる器官に分化。

咽頭嚢の分化

  • 第1咽頭嚢:耳管(耳管咽頭管)と中耳腔に発達。
  • 第2咽頭嚢:口蓋扁桃の上皮性部分に寄与。
  • 第3咽頭嚢:背側部 → 下副甲状腺、腹側部 → 胸腺。
  • 第4咽頭嚢:背側部 → 上副甲状腺、腹側部 → ウルトラベリア小体(後に傍濾胞細胞)。

甲状腺の発生

  • 4週:舌盲孔付近の内胚葉から甲状腺原基が出現。
  • 5〜7週:下降しながら前頸部に移動、最終的に気管前方に位置。
  • 10週以降:濾胞形成開始、胎生中期からヨード濃縮・甲状腺ホルモン合成が始まる。

副甲状腺の発生

  • 第3咽頭嚢背側部 → 下副甲状腺(下降して甲状腺下部へ)。
  • 第4咽頭嚢背側部 → 上副甲状腺(相対的に高い位置に残る)。

胸腺の発生

  • 第3咽頭嚢腹側部に由来。
  • 6〜8週:前縦隔に向かって下降。
  • 胎生中期以降:皮質・髄質に分化し、T細胞分化の場として機能開始。

3. 臨床的意義

  • 甲状舌管嚢胞:甲状腺下降経路が遺残して嚢胞化。
  • 異所性甲状腺:甲状腺組織が下降途中に残る(舌甲状腺など)。
  • DiGeorge症候群:第3・4咽頭嚢の形成異常 → 胸腺低形成・副甲状腺低形成、免疫不全や低カルシウム血症をきたす。
  • 副甲状腺の位置異常:下降の過程で多彩な位置に存在し、外科的治療の際に問題となる。

まとめ

  • 咽頭嚢は内胚葉由来で、耳管・扁桃・副甲状腺・胸腺などを形成。
  • 甲状腺は舌盲孔から発生し、前頸部へ下降。
  • 副甲状腺は第3・4咽頭嚢背側部、胸腺は第3咽頭嚢腹側部に由来。
  • 発生異常は嚢胞、異所性甲状腺、DiGeorge症候群など臨床的に重要。
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