組織学とは何か
組織学(Histology)は、生物の体を構成する細胞や組織を顕微鏡レベルで観察し、その構造や機能を理解する学問です。解剖学が「肉眼で見える構造」を対象とするのに対し、組織学は「顕微鏡でしか見えない微細な構造」を対象とします。
医学・生物学の基礎として不可欠であり、病理学や発生学とも深く結びついています。
人体を構成する4つの基本組織
人体は多様な器官で成り立っていますが、その基本単位となる組織は大きく4種類に分類されます。
- 上皮組織:体表や臓器の内面を覆い、保護や分泌・吸収を担う。
- 結合組織:組織や臓器を支持・結合し、血液や脂肪組織も含む。
- 筋組織:収縮により運動やポンプ作用を担う。骨格筋・心筋・平滑筋に分類される。
- 神経組織:情報伝達を担い、脳・脊髄・末梢神経を構成する。
これらの組み合わせにより、臓器や器官系が成立しています。
組織学の研究手法
組織を観察するためには、試料を作製する過程が重要です。
- 固定:ホルマリンなどで細胞構造を保存
- 包埋・切片作製:パラフィンや凍結による切片化
- 染色:HE染色(ヘマトキシリン・エオシン)が基本。他にPAS染色、免疫染色などがある
- 観察:光学顕微鏡・蛍光顕微鏡・電子顕微鏡を用いる
組織学が重要な理由
- 医学教育:解剖・病理学の理解に必須
- 臨床応用:がんや炎症などの診断に組織像が活用される
- 研究:発生学・再生医療・細胞生物学と密接に関係
今後のシリーズ展開
この概論を踏まえて、次回以降は各論を1つずつ掘り下げていきます。予定は以下の通りです。
- 第2回:上皮組織
- 第3回:結合組織
- 第4回:筋組織
- 第5回:神経組織
- 第6回:特殊な組織(血液・リンパなど)
📌 まとめ
組織学は人体を構成する基本的な仕組みを理解するための重要な学問です。概論では「4大組織の分類」と「研究手法」を押さえることで、各論への理解が深まります。
👉 次回は 上皮組織 を取り上げます。