(第5回:神経組織)神経組織の基礎:ニューロンとグリア細胞の構造と機能

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神経組織とは

神経組織(nervous tissue)は、体内の情報伝達・統合・制御を担う組織です。神経系は中枢神経系(脳・脊髄)と末梢神経系(末梢神経・神経節)に分けられます。
その基本単位が ニューロン(神経細胞) と、それを支える グリア細胞(支持細胞) です。


ニューロン(Neuron)

ニューロンは電気的興奮を伝える細胞で、情報の受容・統合・伝達を担います。

ニューロンの基本構造

  • 細胞体(ソーマ):核を含み、代謝活動の中心。
  • 樹状突起(dendrite):他の細胞からの信号を受け取る。
  • 軸索(axon):興奮を他の細胞に伝える。末端はシナプスを形成。

ニューロンの分類

  • 形態的分類:多極・双極・単極など。
  • 機能的分類
    • 感覚ニューロン(求心性)
    • 運動ニューロン(遠心性)
    • 介在ニューロン(中継・統合)

シナプス(Synapse)

ニューロン間の接続部位。電気的興奮を**化学物質(神経伝達物質)**を介して伝える。
主要な伝達物質には、アセチルコリン、グルタミン酸、GABA、ドパミンなどがある。


グリア細胞(Glial cells)

神経組織の支持・栄養・保護を担う細胞群。ニューロンよりも数が多い。

中枢神経系のグリア細胞

  • アストロサイト:代謝支持、イオンバランス調整、血液脳関門の形成
  • オリゴデンドロサイト:中枢神経の髄鞘形成
  • ミクログリア:免疫監視・貪食作用(脳のマクロファージ)
  • 上衣細胞:脳室や脊髄管を覆い、脳脊髄液の循環に関与

末梢神経系のグリア細胞

  • シュワン細胞(Schwann cell):末梢神経の髄鞘形成
  • 衛星細胞:神経節内でニューロンを支持

髄鞘と跳躍伝導

髄鞘(myelin sheath)は、軸索を絶縁する膜構造で、神経伝導の高速化に寄与します。
髄鞘がある軸索ではランヴィエ絞輪を介して興奮が飛び飛びに伝わる(跳躍伝導)。


神経組織の再生と可塑性

ニューロンは一般に分裂しないが、神経回路はシナプス可塑性により機能的再構築が可能です。
末梢神経はある程度再生能を持つが、中枢神経では限定的です。


臨床との関連

  • 多発性硬化症(MS):中枢の髄鞘脱失
  • アルツハイマー病:神経変性とシナプス障害
  • パーキンソン病:ドパミン神経の変性
  • 末梢神経障害:糖尿病性神経障害など

📌 まとめ
神経組織はニューロンとグリア細胞からなり、電気信号と化学伝達を組み合わせて全身の情報ネットワークを形成します。
その精緻な構造と機能の理解は、神経疾患や脳科学の基礎となります。

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