(第6回:特殊な組織)特殊な組織:血液・リンパ・造血の仕組みをわかりやすく解説

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特殊な組織とは

血液やリンパは、形態的には液体ですが、広義の結合組織に分類されます。
その理由は、発生的に間葉系(mesenchyme)由来であり、細胞と細胞外基質(血漿・リンパ液)から構成されるためです。
これらの組織は、物質輸送・免疫防御・恒常性維持など、全身の機能を支える重要な役割を担っています。


1. 血液(Blood)

血液の構成

  • 血漿(plasma):液体成分。水、電解質、タンパク質(アルブミン、フィブリノーゲン、免疫グロブリンなど)を含む。
  • 血球成分:赤血球・白血球・血小板の3系統。

赤血球(erythrocyte)

  • 無核・円盤状で、酸素運搬を担う。
  • ヘモグロビンを多量に含み、酸素と可逆的に結合。
  • 骨髄で造血幹細胞から分化し、約120日で脾臓で破壊される。

白血球(leukocyte)

  • 免疫応答を担う。顆粒球・リンパ球・単球に分類。
    • 好中球:貪食作用。急性炎症の中心。
    • 好酸球:寄生虫感染やアレルギー反応に関与。
    • 好塩基球:ヒスタミン放出などアレルギー応答。
    • リンパ球:免疫の司令塔(B細胞・T細胞・NK細胞)。
    • 単球:組織内でマクロファージに分化し、異物処理を担う。

血小板(platelet)

  • 骨髄の巨核球から分裂して生じる小片。
  • 血液凝固と止血に必須。

2. 造血組織(Hematopoietic tissue)

造血は主に骨髄で行われます。胎児期には肝臓や脾臓でも造血が見られます。

造血の基本原理

  • すべての血球は**造血幹細胞(HSC)**から分化。
  • 幹細胞 → 前駆細胞 → 成熟血球 という段階を経る。
  • ホルモンによる制御:
    • エリスロポエチン(EPO):赤血球産生促進
    • トロンボポエチン(TPO):血小板産生促進
    • G-CSF:好中球分化促進

3. リンパ組織(Lymphatic tissue)

リンパの役割

血液の毛細管から漏出した液体を回収し、免疫応答を行う。

一次リンパ器官

  • 胸腺:T細胞の分化・成熟
  • 骨髄:B細胞の成熟

二次リンパ器官

  • リンパ節:抗原提示とリンパ球活性化の場。皮質にB細胞、傍皮質にT細胞が局在。
  • 脾臓:血液の濾過・老化赤血球の除去・免疫応答の誘導。
  • MALT(粘膜関連リンパ組織):消化管や呼吸器に分布し、局所免疫に関与。

4. 臨床との関連

  • 貧血:赤血球やヘモグロビンの減少。鉄欠乏性・再生不良性など多様。
  • 白血病:造血幹細胞の腫瘍性増殖。
  • リンパ腫:リンパ組織由来の悪性腫瘍。
  • 多発性骨髄腫:形質細胞の異常増殖。
  • リンパ浮腫:リンパ液の排出障害による組織浮腫。

📌 まとめ
血液とリンパは、体の中を流れる“液体の結合組織”として、酸素運搬、免疫、防御、恒常性維持の中心的役割を担います。
その細胞構成と分化経路を理解することは、臨床病態の理解に直結します。

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