核酸シリーズ 第1回:核酸とは何か ― 生命の情報を担う分子

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核酸とは何か

核酸(nucleic acid)は、すべての生物がもつ遺伝情報を担う分子です。
私たちの体をつくる設計図、つまり「どのタンパク質をどのように作るか」という情報は、すべて核酸に記録されています。

核酸には大きく分けて2種類があります:

  • DNA(デオキシリボ核酸):遺伝情報を長期的に保存する分子
  • RNA(リボ核酸):DNAの情報を一時的に写し取り、タンパク質合成に利用する分子

ヌクレオチド ― 核酸の基本単位

核酸は「ヌクレオチド(nucleotide)」と呼ばれる単位が多数連なってできています。
ヌクレオチドは次の3つの要素から構成されます。

  1. リン酸(phosphate group)
  2. 糖(sugar):DNAではデオキシリボース、RNAではリボース
  3. 塩基(base):アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)

塩基は情報の“文字”に相当します。
DNAでは A, T, G, C の4種類、RNAでは A, U, G, C の4種類の塩基が使われています。


DNAとRNAの違い

特徴DNARNA
糖の種類デオキシリボースリボース
塩基A, T, G, CA, U, G, C
鎖の数二本鎖一本鎖
安定性高い低い
主な役割遺伝情報の保存情報伝達、触媒、調節

DNAは二本鎖で安定しており、細胞核の中に長期的に保管されています。
一方、RNAは一時的に合成される分子で、メッセンジャーRNA(mRNA)リボソームRNA(rRNA) など、さまざまな種類が存在します。


塩基配列と遺伝情報

DNA上の塩基配列(A, T, G, Cの並び)は、遺伝子を形成します。
遺伝子は、タンパク質を合成するための情報をコードしています。
つまり、塩基の並び方が異なれば、合成されるタンパク質のアミノ酸配列も変わり、生物の性質の違いにつながります。

このように、核酸は「情報を保存・伝達する化学分子」であり、生命の本質的な記録媒体といえます。


核酸研究の始まり

核酸が初めて発見されたのは1869年、スイスの化学者ミーシェルによってでした。
彼は白血球から「ヌクレイン」と呼ばれる物質を分離し、後にこれがDNAであることが明らかになります。
その後、ワトソンとクリックによる**DNA二重らせん構造(1953年)**の発見が、分子生物学の時代を切り開くことになりました。


まとめ

  • 核酸はDNAとRNAの2種類に分かれる
  • 基本単位はヌクレオチド(リン酸+糖+塩基)
  • 塩基配列が遺伝情報をコードしている
  • DNAは情報の保存、RNAは情報の利用を担う

次回(第2回)は、**「DNAの二重らせん構造とその安定性」**について解説します。
DNAがどのようにして情報を安定的に保持できるのか、その分子構造の巧妙さを詳しく見ていきます。

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