はじめに
人生の約3分の1を占める「睡眠」。
にもかかわらず、「なぜ眠るのか?」という根本的な問いに、私たちは意外と答えられません。
このシリーズでは、睡眠を感覚や健康法ではなく、“科学”として理解することを目指します。
第1回はまず、「睡眠とはそもそも何か」「なぜ進化の過程で失われなかったのか」を整理します。
睡眠は「休息」ではない
よくある誤解は、
睡眠=脳や体を休ませる時間
という考えです。
実際には、睡眠中の脳は非常に能動的です。
- ニューロンは活動している
- 情報の整理・統合が起きている
- 特定の脳領域は覚醒時より活発になる
つまり睡眠は
👉 「何もしない時間」ではなく、「覚醒中にはできない作業をする時間」
と考えた方が正確です。
なぜ眠るのか?主な3つの理由
現在の睡眠科学では、睡眠の役割は大きく次の3つに整理されます。
① 脳のメンテナンス
覚醒中、脳には大量の情報と代謝産物が蓄積します。
- 神経活動の副産物
- 不要になったシナプス
- 老廃タンパク質(例:アミロイドβ)
睡眠中には
✔ グリンパティックシステムが活性化
✔ 老廃物が脳外へ排出
**「脳の掃除時間」**とも言えます。
② 記憶と学習の整理
睡眠中、特にノンレム睡眠では、
- 海馬 → 大脳皮質への記憶転送
- 重要な記憶の強化
- 不要な記憶の削除
が起こります。
だからこそ
「寝てから覚えたことが定着する」
「徹夜すると頭が回らない」
という現象が生じます。
③ 生存戦略としての役割
一見すると、眠るのは危険です。
- 外敵に無防備
- 行動できない
それでもほぼすべての動物が睡眠を持つという事実は、
👉 睡眠が「生存に必須」だからです。
進化的には、
- エネルギー配分の最適化
- 神経回路の再調整
- 日中活動への最適化
といった長期的利益が、短期的リスクを上回ったと考えられています。
「眠気」はどこから来るのか
眠気には2つの力が関与します。
- 睡眠圧
起きている時間が長いほど溜まる(アデノシン) - 体内時計
時間帯によって眠りやすさが変わる
この2つが合わさったとき、
「自然な眠気」が生じます。
👉 睡眠は意志ではなく、生理現象です。
まとめ
- 睡眠は単なる休息ではない
- 脳のメンテナンス・記憶整理に必須
- 進化的にも保存された重要な機能
- 眠気は生理的に制御されている
次回は、
「睡眠は一様ではない」
――レム睡眠とノンレム睡眠の科学に進みます。