はじめに
「寝ている間、脳は休んでいる」
これは直感的には正しそうですが、科学的にはほぼ逆です。
実際、睡眠中の脳は
- 特定の回路が強く活動し
- 情報を選別・再編成し
- 覚醒中にはできない仕事をこなしています
第3回では、睡眠中に脳で何が起きているのかを、脳活動レベルで見ていきます。
睡眠中の脳活動は「場所ごとに違う」
まず大前提として、
👉 脳は一斉にオン/オフになる臓器ではありません。
- 覚醒中でも静かな領域がある
- 睡眠中でも活発な領域がある
睡眠とは、
脳活動の“再配置”が起こる状態
と捉えると理解しやすくなります。
ノンレム睡眠中の脳:同期と整理
ノンレム睡眠(特にN3)では、
- ニューロンの発火が同期
- ゆっくりした徐波が出現
- 活動と沈黙が交互に訪れる
この「ONとOFFのリズム」が重要です。
シナプスの選別
覚醒中に増えたシナプス結合は、
- 重要なもの → 強化
- 不要なもの → 弱化・削除
👉 シナプス恒常性仮説
(起きている間に増えすぎた結合を、睡眠でリセット)
つまり、
寝ないと脳が“配線過多”になる。
海馬と大脳皮質の対話
ノンレム睡眠中、
- 海馬での活動パターンが再生される
- 同期して大脳皮質が反応する
これは
👉 記憶の再生(replay)
と呼ばれます。
昼間の経験が、
「もう一度脳内で再生されている」
と考えるとイメージしやすいです。
レム睡眠中の脳:再結合と感情処理
一方、レム睡眠では様相が一変します。
活発になる領域
- 大脳皮質(特に連合野)
- 扁桃体(感情)
- 海馬(記憶)
抑制される領域
- 前頭前野(論理・抑制)
結果として、
- 感情が強調され
- 論理が緩み
- 奇妙な夢が生まれる
👉 夢は「異常」ではなく、脳の正常な活動産物です。
なぜ夢は支離滅裂なのか
夢が不思議なのは理由があります。
- 前頭前野が静か
- 批判的思考が働かない
- 連想が自由に広がる
その結果、
- 時系列が崩れる
- 現実検証が弱くなる
これは、
記憶や感情を“安全に再編成する場”
としてはむしろ合理的です。
睡眠中も脳はエネルギーを使う
驚くことに、
- 睡眠中の脳エネルギー消費
- 覚醒時とほぼ同等
特にレム睡眠では、
👉 脳は「かなり忙しい」
睡眠は
❌ 省エネモード
⭕ 機能特化モード
と考えた方が近いです。
睡眠を削ると何が起こるか
睡眠不足が続くと、
- 情報処理が雑になる
- 感情制御が破綻しやすい
- 創造性が低下する
これは「疲れ」ではなく、
👉 脳の再編成が追いつかない状態
脳は寝ないと“更新できない”のです。
まとめ
- 睡眠中も脳は活発に働いている
- ノンレム睡眠では整理と固定
- レム睡眠では再結合と感情処理
- 夢は正常な脳活動の一部
- 睡眠は脳の再編成時間
次回は、
「なぜ夜になると眠くなるのか?」
――体内時計と概日リズムに進みます。