CAR構造を分子レベルで理解する ― 共刺激分子は何を制御しているのか?
1. CARの基本構造(復習)
CARは以下の4領域で構成されます:
- scFv(抗体由来抗原認識部位)
- ヒンジ
- 膜貫通領域
- 細胞内シグナル領域
このうち、治療効果を最も左右するのが細胞内シグナル領域です。
2. 第2世代CARの核心:共刺激分子
現在の主流は第2世代CARで、
- CD3ζ
- 共刺激分子(CD28 or 4-1BB)
の組み合わせです。
代表例:
- Kymriah → 4-1BB型
- Yescarta → CD28型
3. CD28型CARの特徴
分子シグナル
- PI3K-AKT経路強力活性化
- mTOR活性化
- 解糖系依存性増加
生物学的特徴
- 早期増殖が強い
- エフェクター型に分化しやすい
- 持続性はやや短い
イメージ:
「瞬間火力型」
腫瘍量が多いケースでは迅速な腫瘍縮小に有利。
4. 4-1BB型CARの特徴
分子シグナル
- TRAF2経由
- NF-κB活性化
- ミトコンドリア生合成促進
生物学的特徴
- 中央記憶T細胞様分化
- 持続性が高い
- 疲弊(exhaustion)が比較的抑制
イメージ:
「持久戦型」
長期寛解に寄与する傾向。
5. 代謝制御とexhaustion
T細胞は代謝状態で運命が決まります。
| 状態 | 代謝 | 分化 |
|---|---|---|
| 解糖系優位 | Effector | 短命 |
| 酸化的リン酸化 | Memory | 長寿命 |
CD28型は解糖依存性を強くし、
4-1BB型はミトコンドリア機能を高める。
つまり、
共刺激分子は「代謝プログラム」を書き換えている
これが設計思想の核心です。
6. なぜexhaustionが問題になるのか?
慢性的抗原刺激 →
PD-1、TIM-3、LAG-3上昇 →
機能低下
この現象はチェックポイント阻害剤(例:Nivolumab)が標的にしている経路でもあります。
CAR-Tでは:
- 強すぎる初期刺激
- 持続抗原曝露
が疲弊を誘導します。
7. 次世代設計思想
現在研究されている方向性:
- tonic signaling低減設計
- logic-gated CAR(AND/NOT回路)
- cytokine-armored CAR
- exhaustion-resistant CAR
ここから先は「合成免疫学」の領域になります。
8. 固形がんへの壁
血液がんと違い固形がんでは:
- 抗原ヘテロジェネイティ
- 免疫抑制性TME
- 物理的バリア
- 低酸素環境
つまり問題はシグナル設計だけではない。