ノーベル医学賞が示す医学の進歩
1901年に始まったノーベル生理学・医学賞は、医学研究の発展そのものを示しています。
前回の記事では
- 血清療法
- マラリア感染経路
- 光線療法
という感染症と治療技術の誕生を紹介しました。
1904〜1906年になると、医学研究はさらに広がり
- 生理学
- 微生物学
- 神経科学
という現代医学の基礎分野が大きく発展します。
1904年
消化生理学の確立
1904年のノーベル生理学・医学賞は
Ivan Pavlov
に授与されました。
彼は現在では条件反射の研究で有名ですが、実際に受賞理由となった研究は
消化腺の生理学
です。
胃液分泌の研究
当時、消化の仕組みはまだよく理解されていませんでした。
Pavlovは犬を用いた実験で、胃液の分泌を精密に測定する方法を開発しました。
その結果、消化液の分泌は
- 食物の種類
- 神経刺激
によって制御されていることを明らかにしました。
これは
神経系が消化を制御する
という重要な発見でした。
条件反射の発見
実験の過程で、Pavlovは興味深い現象を観察します。
犬は
- 食物を見る
- 飼育者を見る
だけで唾液を分泌するようになったのです。
この現象は
条件反射(conditioned reflex)
と呼ばれます。
つまり
- 刺激
- 学習
- 神経反応
が結びつく仕組みです。
この研究は
- 神経科学
- 心理学
- 行動科学
に大きな影響を与えました。
1905年
結核菌の発見
1905年の受賞者は
Robert Koch
です。
彼は
結核菌の発見
により受賞しました。
結核という病気
19世紀のヨーロッパでは
結核は
最も恐れられた感染症
でした。
- 若者の死亡原因1位
- 都市人口の多くが感染
という状況でした。
結核菌の発見
1882年、Kochは
Mycobacterium tuberculosis
を発見しました。
これは
病気が特定の微生物によって引き起こされる
という証拠でした。
コッホの原則
Kochはさらに
病原体を証明するための基準として
コッホの原則
を提唱しました。
1
病原体は患者から見つかる
2
培養できる
3
動物に感染させると同じ病気が起こる
4
再び病原体が分離される
この考え方は
感染症研究の基本原理
となりました。
1906年
神経科学の誕生
1906年のノーベル生理学・医学賞は
2人の研究者に授与されました。
- Camillo Golgi
- Santiago Ramón y Cajal
です。
彼らは
神経系の構造
を解明しました。
ゴルジ染色
Golgiは
銀染色法
を開発しました。
これは
神経細胞を黒く染める方法で
神経細胞の形を初めて観察できる
画期的な技術でした。
この方法は
Golgi染色
として現在でも知られています。
ニューロン理論
Golgi染色を使って研究したのが
Cajalです。
彼は神経細胞を観察し
重要な結論にたどり着きました。
神経系は
連続したネットワークではなく
個々の細胞からできている
というものです。
この考え方は
ニューロン理論
と呼ばれます。
神経細胞の基本構造
Cajalは神経細胞の構造も明らかにしました。
神経細胞は
- 樹状突起
- 細胞体
- 軸索
から構成されています。
この構造は現在の神経科学でも基本となっています。
面白い歴史的事実
興味深いことに
GolgiとCajalは
神経系の構造について正反対の考え
を持っていました。
Golgi
神経系は連続したネットワーク
Cajal
神経は独立した細胞
最終的に
Cajalの理論が正しい
ことが証明されました。
この時代の医学の進歩
1904〜1906年の研究は、医学の重要な基礎を作りました。
消化生理学
神経制御の理解
微生物学
感染症の原因解明
神経科学
ニューロン理論
これらは現在の
- 神経科学
- 感染症学
- 行動科学
すべての基盤となっています。
まとめ
1904〜1906年のノーベル生理学・医学賞は
医学の3つの基礎分野を確立しました。
1904
消化生理学と条件反射(Pavlov)
1905
結核菌の発見(Koch)
1906
ニューロン理論(Golgi & Cajal)
これらの研究は
現代医学の基礎概念
を作った重要な発見でした。