ノーベル生理学・医学賞の歴史④:1910〜1913年|核酸研究・アナフィラキシー・平衡感覚

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医学研究が「分子」に近づいた時代

20世紀初頭、医学研究は大きな変化を迎えます。

それまでの医学は主に

  • 解剖学
  • 生理学
  • 感染症研究

が中心でした。

しかし1910年代になると研究の焦点は

生命の分子レベルの仕組み

へと近づき始めます。

この時代には

  • 核酸の研究
  • 免疫反応のメカニズム
  • 神経感覚系

など、現代生命科学の基礎となる研究が行われました。


1910年

免疫反応の過剰反応 ― アナフィラキシーの発見

1910年のノーベル生理学・医学賞は

Charles Richet

に授与されました。

彼は

アナフィラキシー(anaphylaxis)

という現象を発見しました。


アナフィラキシーとは何か

アナフィラキシーとは

免疫反応が過剰に起こる現象

です。

通常、免疫は

  • 細菌
  • ウイルス
  • 毒素

などから体を守ります。

しかし場合によっては

免疫反応が過剰になり、逆に危険な状態になる

ことがあります。

これがアナフィラキシーです。


Richetの実験

Richetは海洋生物の毒を研究していました。

彼は犬に

海洋生物の毒を少量注射しました。

すると

最初の注射ではほとんど反応がありません。

しかし数週間後に同じ毒を注射すると

激しいショック症状

が起こりました。

この現象は

  • 血圧低下
  • 呼吸困難
  • 死亡

などを引き起こします。


免疫学の大発見

この結果は驚くべきものでした。

それまで免疫とは

体を守る反応

だと考えられていました。

しかしRichetの研究は

免疫が逆に危険になることがある

ことを示したのです。


現代医療との関係

アナフィラキシーは現在でも重要な医学テーマです。

例えば

  • 食物アレルギー
  • 薬物アレルギー
  • 蜂毒アレルギー

などで起こります。

また

IgE抗体

肥満細胞

などの研究は、この発見から発展しました。


1911年

分子生物学の源流 ― 核酸研究

1911年のノーベル生理学・医学賞は

Albrecht Kossel

に授与されました。

彼は

核酸の化学構造

を研究しました。


核酸研究の始まり

19世紀後半、細胞核から

核酸(nucleic acid)

という物質が発見されていました。

しかし当時は

この物質の役割はほとんどわかっていませんでした。


Kosselの研究

Kosselは核酸を化学的に分析し

その構成成分を明らかにしました。

彼は

核酸が

塩基

と呼ばれる分子から構成されることを発見しました。


核酸塩基の発見

Kosselは以下の分子を同定しました。

  • アデニン
  • グアニン
  • シトシン
  • チミン

これらは現在

DNAの塩基

として知られています。


DNA研究への影響

Kosselの研究は

後の

DNA研究

の基礎となりました。

その後

1953年に

James Watson

Francis Crick

DNA二重らせん構造

を発見します。

つまり

Kosselの研究は

分子生物学の最初のステップ

だったのです。


1912年

外科手術と臓器機能

1912年のノーベル生理学・医学賞は

Alexis Carrel

に授与されました。

彼は

血管縫合技術

を開発しました。


血管縫合の重要性

外科手術では

血管を正確につなぐことが重要です。

しかし当時は

血管を安全に縫合する技術がありませんでした。

Carrelは

非常に精密な縫合法を開発しました。


臓器移植の基礎

この技術は後に

臓器移植

の基礎となりました。

現在の

  • 心臓移植
  • 腎臓移植
  • 肝臓移植

などの外科手術は

この技術の発展によって可能になりました。


1913年

平衡感覚の研究

1913年のノーベル医学賞は

Robert Bárány

に授与されました。

彼は

内耳の前庭系

を研究しました。


平衡感覚の仕組み

人間は

  • 立つ
  • 歩く
  • 走る

といった動作を

自然に行うことができます。

これは

前庭系

という器官によって制御されています。

この器官は

内耳に存在します。


Bárányの発見

Bárányは

内耳に温水や冷水を入れると

眼球が動くことを発見しました。

この反応は

前庭眼反射

と呼ばれます。


現代医療への応用

この研究は現在

  • めまい診断
  • 内耳疾患診断
  • 神経学検査

などに利用されています。


この時代の医学の重要性

1910〜1913年の研究は

医学を大きく進歩させました。

この時代に

  • アレルギー研究
  • 核酸研究
  • 外科技術
  • 神経感覚研究

が発展しました。

これらはすべて

現代医学の基礎

となっています。


現代生命科学とのつながり

この時代の研究は

現在の研究と深くつながっています。

免疫学
アレルギー
免疫療法

分子生物学
DNA
ゲノム研究

外科学
移植医療

神経科学
前庭系研究

つまり

現在の医学研究の多くは

20世紀初頭の基礎研究

から発展したものです。


まとめ

1910〜1913年のノーベル生理学・医学賞は

医学研究の方向を大きく変えました。

1910
アナフィラキシー(Richet)

1911
核酸研究(Kossel)

1912
血管縫合技術(Carrel)

1913
前庭系研究(Bárány)

これらの研究は

  • 分子生物学
  • 免疫学
  • 外科学
  • 神経科学

の基礎を築きました。


次回予告

次回は

1914〜1919年

のノーベル生理学・医学賞を解説します。

この時代は

  • 第一次世界大戦
  • 医学研究の停滞
  • それでも続いた生理学研究

という医学史の特異な時代になります。

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