医学が「機能」を理解し始めた時代
1920年代に入ると医学は新しい段階に入ります。
それまでの医学は
- 病原体の発見
- 臓器の機能
の理解が中心でした。
しかしこの時代から
体の中で何が起きているのか(機能・メカニズム)
を解明する研究が進みます。
1924〜1927年のノーベル医学賞は
その流れを象徴しています。
1924年
ノーベル賞なし(研究停滞期)
1924年は
ノーベル生理学・医学賞は授与されませんでした。
これは
- 適切な候補がいなかった
- 評価が難しかった
などの理由によるものです。
しかし実際には
この時期にも重要な研究は進んでいました。
1925年
代謝研究の発展
1925年のノーベル生理学・医学賞は
Otto Fritz Meyerhof
に授与されました。
彼は
筋肉の代謝
を研究しました。
筋肉はどうやって動くのか
当時の大きな疑問は
筋肉はどのようにエネルギーを使うのか
というものでした。
Meyerhofは
筋肉収縮の際に
- グリコーゲンが分解される
- 乳酸が生成される
ことを発見しました。
エネルギー代謝の理解
この研究により
生体のエネルギーは
化学反応によって生まれる
ことが明確になりました。
これは後の
- ATP
- 解糖系
- ミトコンドリア研究
につながります。
現代研究との関係
この流れは現在の
- がん代謝(Warburg効果)
- 細胞エネルギー研究
に直結しています。
1926年
ノーベル賞なし
1926年も
ノーベル医学賞は授与されませんでした。
この時期は
医学研究の進展はあったものの
決定的な「単一の発見」として評価しにくい時代でした。
1927年
心電図の発明
1927年のノーベル生理学・医学賞は
Willem Einthoven
に授与されました。
彼は
心電図(ECG)
を発明しました。
心電図とは何か
心電図は
心臓の電気活動を記録する方法です。
心臓は
電気信号によって収縮しています。
その電気活動を
体表から記録したものが
心電図
です。
アイントーベンの装置
Einthovenは
非常に高感度な装置
弦電流計(string galvanometer)
を開発しました。
この装置により
心臓の微弱な電気信号を測定できるようになりました。
心電図の波形
Einthovenは
現在でも使われている
- P波
- QRS波
- T波
という概念を確立しました。
医学への革命的影響
心電図の発明は
医療を大きく変えました。
それまで心臓病は
- 症状
- 聴診
でしか評価できませんでした。
しかし心電図により
客観的に心臓の状態を評価できる
ようになりました。
現在の医療との関係
現在でも心電図は
- 心筋梗塞
- 不整脈
- 心不全
の診断に不可欠です。
ほぼすべての病院で使用されています。
この時代のもう一つの重要テーマ
神経伝達の化学説(背景)
1920年代は
神経伝達の本質
が議論されていた時代でもあります。
当時の争点は
神経は
- 電気で伝わるのか
- 化学物質で伝わるのか
というものでした。
化学伝達の証明へ
この問題は後に
Otto Loewi
と
Henry Dale
によって解決されます(1936年ノーベル賞)。
Loewiは
カエルの心臓を使った実験で
神経刺激により
化学物質(アセチルコリン)が放出される
ことを証明しました。
なぜ1920年代が重要なのか
1924〜1927年の研究は
一見バラバラに見えます。
しかし共通点があります。
それは
体の中の「見えない機能」を可視化した
という点です。
可視化された生体機能
この時代に
以下が明らかになりました。
代謝
→ エネルギーの流れ
心電図
→ 電気活動
神経伝達
→ 情報伝達
つまり
生命現象を
物理・化学的に理解する時代
が始まったのです。
現代医学とのつながり
この時代の研究は
現在の多くの分野につながっています。
代謝研究
→ がん、糖尿病
心電図
→ 循環器医療
神経伝達
→ 神経科学、精神医学
まとめ
1924〜1927年のノーベル医学賞は
医学の新しい方向を示しました。
1924
授与なし
1925
筋肉代謝(Meyerhof)
1926
授与なし
1927
心電図(Einthoven)
この時代は
生命の仕組みを理解する医学
の始まりでした。
次回
次回は
1928〜1931年
を解説します。
ここでは
- ペニシリン(抗生物質)
- 神経反射
- 呼吸酵素
など
現代医療の核心となる発見
が登場します。