1990年代前半:生命の「設計図」と「異常」の理解
1992〜1995年は、
- 遺伝子による発生制御
- 異常タンパク質による疾患
- 免疫シグナル
が統合され、
生命の正常と異常が同じ原理で説明される時代
になりました。
1992年
セカンドメッセンジャーとシグナル伝達
1992年のノーベル生理学・医学賞は
- Edmond H. Fischer
- Edwin G. Krebs
に授与されました。
リン酸化による制御
彼らは
- Protein phosphorylation
を発見し、
タンパク質の機能が
可逆的にオン・オフされる
ことを示しました。
1993年
PCR技術のノーベル賞
1993年のノーベル生理学・医学賞は
- Kary Mullis
- Michael Smith
に授与されました。
DNA操作の革命
Mullisは
- Polymerase chain reaction
を開発し、
DNAを指数関数的に増幅することを可能にしました。
遺伝子改変技術
Smithは
部位特異的変異導入法を開発し、
遺伝子機能解析が飛躍的に進みました。
1994年
嗅覚受容体の発見
1994年のノーベル生理学・医学賞は
- Richard Axel
- Linda B. Buck
に授与されました。
においの分子認識
彼らは
- 嗅覚受容体遺伝子群
を発見し、
においが
受容体の組み合わせコード
として認識されることを示しました。
1995年
免疫応答と抗原提示
1995年のノーベル生理学・医学賞は
- Peter C. Doherty
- Rolf M. Zinkernagel
に授与されました。
MHC制限の発見
彼らは
T細胞が抗原を認識する際に
- MHC restriction
が必要であることを発見しました。
免疫の精密性
これにより免疫は
単なる防御ではなく高度に選択された認識系
であることが明確になりました。
プリオン概念の確立(1990年代の重要進展)
1990年代には
- Stanley B. Prusiner
が提唱した
- Prion
概念が確立しつつありました(ノーベル賞は1997年)。
異常タンパク質による疾患
プリオンは
構造異常だけで感染性を持つタンパク質
であり、
生命科学の常識を大きく覆しました。
この4年間の科学的意義
1992〜1995年は、生命科学が
制御・認識・設計図
という三つの観点で完成した時代でした。
① シグナル制御の基本原理
リン酸化の発見により、
細胞は
スイッチングシステム
として理解されるようになりました。
② 遺伝子操作の標準化
PCRと変異導入により、
遺伝子研究は
誰でも再現可能な技術
となりました。
③ 感覚と認識の分子基盤
嗅覚や免疫は、
受容体とコードの組み合わせ
として理解されました。
まとめ
| 年 | 受賞者 | 主題 |
|---|---|---|
| 1992 | Fischer & Krebs | リン酸化 |
| 1993 | Mullis & Smith | PCR |
| 1994 | Axel & Buck | 嗅覚受容体 |
| 1995 | Doherty & Zinkernagel | 免疫認識 |
1992〜1995年は
生命の「制御」と「認識」が統一された時代
でした。
次回予告
次回は
第24回:1996〜1999年
を解説します。
ここでは
- プリオンのノーベル賞受賞
- NOシグナル
- 細胞死(アポトーシス)
など、生命の維持と破綻の理解がさらに深まる時代に入ります。